なぜ英語は難しいのか?

 

 英語を学ぶことは英語という異文化を学ぶことだから、その文化的背景の理解もしなければならないので難しいのは当然である、と言ってしまえばそれまでである。しかしこうした一般論はおくとして、間題なのは「言語」としての英語がわれわれ日本人にとって、なぜこうも難しいのかということである。

 

 基本的に言えることは、ウラル・アルタイ語族に属すると言われている日本語と、インド・ヨーロッバ語族に属する英語とが言語形態においてきわめて異なっているからであるということであろう。日本語と同じ語族の韓国の人たちも、英語にはずいぶん苦労しているらしい。『英語は絶対、勉強するな!』(鄭讚容著、サンマーク出版)という本が韓国で五〇万部(シリーズで1〇〇万部)を超す大ベストセラーになり、日本語訳版も評判になりすでにシリしスで七〇万部も売れている。内容はと言えば、タイトルからも想像できるように、いわゆる伝統的な読解中心の学習法ではなく、自国語を子どもの時に覚えたように英語も覚えるべきだ、というものである。すでにそういう考え方がおかしいということについては指摘済みであるが、それはそれとして、こういう本がベストセラーになるということは、いかに韓国の人々も英語に苦労しているかということの証しである。また同病相憐れむ日本でこの本がよく売れていることも、なるほどとうなずけるわけである。

 

 ところが、日本語はウラル・アルタイ語族ではないという別の説もあるように、日本語はかなり特殊な言葉であるという事情がさらに加わるのである。たしかに、日本語は蒙古語・満州語・韓国語と文法構造は非常に似通っている。しかし単語の共通性がきわめて乏しく、また発音もあまり似ていない。とくに発音では、子音終了の発音が日本語には、“nん”を除いてまったくない、というのが際立った特徴で、韓国語と大いに違うところである。その意味では、韓国人のほうが日本人よりは英語の発音、ヒアリングで苦労が少ないと言えるかもしれない。“nん”以外すべての音節に母音がつく(間音系の発音)というのは、ポリネシア系の言葉によく似ているが、世界ではごく少数派である。