なぜ最近の中学では音読をやらないのか

 

 このようにきわめて効果も高く、いわば英語学習に必須の基礎練習である音読が、最近の中学校の英語の授業ではあまり重視されていないようである。少なくとも昔よりも軽視されている傾向がある。これは国語の授業で朗読が軽視されるようになったのとどうも同じ流れの現象であるようだ。子どもの主体性・自主性を尊重する「ゆとり教育」の考え方では、生徒に「強制的」に文章を読みあげさせるのはあまりよくないことになっているからである。

 

 こうして、国語でもそうであるが、英語においてももっとも重要な基礎学習である「朗読」を、かわいそうなことに生徒は「強制される」チャンスを失いつつあるのである。実態がどのようなものであるか、その一端をご紹介しよう。

 

 詩人で翻訳家の川村りつ子さんは、拙著『小学校に英語は必要な筆者にお子紙をくださったが、その中で次のように書いている。い。』(前掲書)を読んで、「大学から英語指導を依頼されてお引き受けして数年になりますが、学生たちの実情が気の毒でなりません。(略)センター試験を受けてきた学生でも、ほとんど全員と言っていいほど、英語のテキストを繰り返し読むということさえ経験してきていないことを知り、愕然としました。一体いつの間に、日本の英語教育はここまでひどくなったのかよ

 

 そして何とかこの空白を取り戻し、まともな英語力をつけてやろうと奮闘されているのである。

文科省が英語を壊す』茂木弘道著より