「砂糖は太る」の誤解

 

 もともと筆者は、血栓症つまり心筋梗塞とか脳梗塞の仕組みを研究していました。大学にいた当時、研究室の誰かが到来物の菓子などを食べていると、「太るぞ!・」などと脅かしたものです。コーヒーなどにも砂糖は入れませんでした。

 

 それは、太った人に血栓ができやすいからです。また、糖分は脂肪に変わり、太る原因になります。太った人の脂肪細胞からは、インスリンが働かないような物質が出たり、あるいは、インスリンの機能を高める物質の分泌が少なくなったりするからです。

 

 しかし当時は、脳のことなどにはあまり関心がありませんでした。そのため、脳がエネルギー源としてブドウ糖しか使えないこと、さらに砂糖はブドウ糖と果糖からなっているだけで、とくに他の炭水化物の小麦粉、米、そば粉などに比べてカロリーが高いことはない、などということに気がつきませんでした。

 

 砂糖のスティックは三グラム入りが多いようです。したがってスティック一本で一ニキロカロリーです。成人男性が一日に必要なカロリーは約二〇〇〇キロカロリーですから、その〇・六パーセントで、他の食べ物と比べても、とくに多いわけではありません。太る原因になるほどの量ではないのです。

『脳の栄養失調』:高田明和著より