体と相談しながら食べる

 

 これは非常に大事なことを示唆しています。

 

 私たちはなぜ食べるのでしょうか。もちろん体の機能をうまく働かせるためのエネルギーや材料を摂り込むためです。しかし摂り込みがすぎれば、太って生活習慣病になります。一方、必要な分だけ摂取できなければ、痩せて、脳を含めて体のいろいろな部分に障害が出ます。

 

 問題は、私たちの進化しすぎた脳が必要とする量が、他の臓器とのバランスを欠く点です。脳は自分に必要な量を確保するために、食べる喜びを感じさせます。食べなければ精神的なストレスにします。

 

 ところが、素直にこの快感にしたがって食べれば、食べすぎてしまい、心臓や血管など他の臓器に障害をおこしたり、糖尿病のような代謝の病をもたらすので寸。

 

 アラキドン酸の問題ほど、食べ物の根本を衝く話はないといってもよいでしょう。アラキドン酸を制限しすぎれば、精神の安定は保てません。しかし摂りすぎれば血栓ができやすくなります。またアラキドン酸でアナンダマイドの受容体を剌激しすぎれば、食べすぎてしまい、肥満にもなります。

 

 脳とそれ以外の臓器の必要量のバランスを保つように食べるのは、楽ではありません。結局、一人一人が自分白身の体と対話して、何をどの程度食べるか決めるしかないのです。なりません。その結果、テストステロンが血中に多く存在するようになります。

 

 テストステロンは女性の視床下部に作用して、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌を減らします。その結果、卵胞刺激ホルモンや黄体化ホルモンの分泌も少なくなります。このため排卵を阻害し、月経を止めるのです。

 

 このように激しい運動をしていったん排卵が止まった女性は、運動をやめて脂肪をつけても、排卵が始まらないことが多いのです。それは、長い問テストステロンにさらされ続けた視床下部の細胞が、レプチンが存在してもGnRHを出すことができなくなっているからです。 そのためにアメリカでは、女性があまりに激しい運動をすることに警告が出されているほどです。

『脳の栄養失調』高田明和著より