骨髄の造血機能を低下させる抗がん剤

 

三大治療の中で、食事療法との兼ね含いでもっとも間題になるのが抗がん剤です。抗がん剤は、細胞に対する毒性を利用してがん細胞を殺す薬です。ですから、正常細胞にとっても毒なのですが、がん細胞のように細胞分裂が活発で増殖スピードの早い細胞ほど、毒性が強く現れます。そこで、正常な細胞が耐えうる範囲でかつ、がん細胞が死ぬギリギリのところを狙って、抗がん剤を投与するのです。したがって、正常な細胞も決して無傷というわけにはいきません。

 

 とくに、ダメージが大きいのが正常な細胞の中で増殖の早い細胞です。具体的には、粘膜や生殖器、骨髄などの細胞です。そのため、抗がん剤で治療を行うと、胃腸の粘膜が損なわれて吐き気や嘔吐、下痢などの消化器症状が現れたり、口内炎や脱毛、若い人の場含は時に不妊症になることもあります。

 

 そして、食事療法にとって、最も障害になるのが「骨髄抑制」です。

 

 免疫を担うリンパ球や顆粒球などの白血球は、赤血球などと一緒に骨髄で造られています。骨髄は、文すどおり骨の中にあり、あらゆる血球を造っているので「血液製造工場」ともいわれます。抗がん剤は、この骨髄の働きに大きなダメージを与えます。

 

 そのため、免疫力が大幅に低下して、抗がん剤治療をしている時は感染に弱くなるのです。あまりに骨髄のダメージが大きくなると、食事療法を行っても白血球が増えず、免疫を増強することができなくなります。

 

QOLが落ちて食べられない、さらには食事療法を行っても白血球が増えず、免疫能力が低下したまま上がってこないというのは、食事療法には致命的な打撃となります。

 

 しかし、私は抗がん剤による治療を全く否定するわけではありません。ここで説明したような抗がん剤は、細胞に対する毒性を利用した薬ですが、最近では、「分子標的治療薬」といってがん細胞の特性に的を絞って攻撃する新しいタイプの抗がん剤も現れています。

 

 なかには、慢性骨髄性白血病のように、新しいタイプの抗がん剤(イマチニブ)でほとんど治るようになったがんもあります。血液のがんは、抗がん剤が効くものも少なくないのです。こうした有効性が明らかながんには、通常どおり抗がん剤を使うのもひとつの方法だと思います。

『癌再発を防ぐ完全食』より