化学療法の効果も高める

 

 しかし、一般的ながん治療について言えば、免疫を犠牲にしない範囲、患者さんの体力がある程度維持できる範囲で抗がん剤を使うべきだと考えています。具体的な数字をあげれば、血液一立方ミリメートルあたり、白血球が三〇〇〇~四〇〇〇個以上、リンパ球が一〇〇〇個以上というのが目安です。がんでない人の白血球は、ふつう四〇〇〇~九〇〇○個ぐらいはあります。自血球が二〇〇〇を切ると、重い感染症を引き起こして命に係わる危険が非常に高くなります。

 

 私は患者さんを定期的に検査をしていて、白血球やリンパ球がこの数値を下回った時には抗がん剤は体止するか、あるいは、免疫を高める薬や食事療法で体力を回復させて、白血球が増えるようにします。そうしなければ、免疫系が壊滅的なダメージを受けて、致命的な状況をまねくことにもなりかねないからです。

 

 つまり、免疫系に致命的なダメージが出ない量を見つけて、抗がん剤を使う。こうすれば、抗がん剤の量はかなり少なくなります。

 

 TS-Iという抗がん剤の飲み薬があります。この薬は注射より副作用が少ないとされ、ふつうは八〇~一〇〇ミリグラムぐらいが標準使用量ですが、私はその半量だけ使います。「そんな量じゃ効きませんよ」と言われますが、これは抗がん剤である程度、がんの勢いを落とし、食事療法で免疫を増強してがんを抑え込むための量だと想定しているので、これでいいのです。

 

 私は最近、食事療法は現代医療の効果を高める作用もあるのではないかと考えるようになりました。たとえば、肝臓に多発性の転移がある場含、私はよく二十四時間肝動注ポー卜療法を行います。本書でも何回か触れましたが、これは、肝臓に直接薄い抗がん剤を入れ続け、がんを攻撃する治療法です。全身的な影響が少ないのと、局所に作用するので抗がん剤の量が少なくてすむのが利点です。

 

 十五年前、この方法での奏功率(がんが消えた人と縮小した人の率)を八十人の患者で調べたのですが、だいたい三割程度でした。ところが、食事療法と併用するようにしてからもう一度、調べてみると、十五人に行ったうち、二人でがんが消え、九人でがんが縮小していました。奏功率は含わせて七三%近かったのです。

 

 食事療法と併用することで、二十四時間肝動注ポート療法の奏功率が2.5倍近く上昇していた。この点についても今後、さらに観察を続けたいと思っています。

 

 このように、食事療法の効果を得るためには、免疫や体力を落とさない程度に抗がん剤を使うのがよいと思います。ただし、ぜひ注意していただきたいのは、とくに飲み薬の抗がん剤の場含、勝手に服用量を減らすことは大変危険です。その上、食事療法も中途半端ならば、自殺行為です。必ず、主治医や専門家の指導を受けて現代医療とのバランスの上で食事療法を実施してください。

『癌再発を防ぐ完全食』より