骨盤神経叢温存手術

 

 機能の温存という点で、近年大きな話題として取り上げられている手術に「骨盤神経叢温存手術」があります。骨盤神経叢は直腸周囲をとりまくようにして分布している神経ネットワークで、膀胱機能、性機能などを支配しています。直腸がんのリンパ節郭清をする際に、この骨盤神経叢を温存して、リンパ節だけを取り除くという手術方法です。しかし、がん細胞はリンパ管だけではなく、神経繊維周囲にも浸潤していく傾向があり、神経を温存することががん細胞を取り残すことになってしまうという危険もはらんでいます。

 

 人工肛門にならずにすむ手術には、おなかからのアプローチでできる限り肛門に近いがんまで切除しようとする傾向の手術(超低位前方切除術と呼ばれる)と、経肛門切除(肛門からのぞき込んで中のがんを切除する方法。外には企くキズはつかない)、経括約筋切除(肛門と括約筋を一ヵ所切ってひろげ、中のがんを切除する方法)、経仙骨式切除(肛門のわき、仙骨のそばに切間を入れ、直腸壁ごとがんを切除する方法)など間腹せすに肛門側からだけのアプローチとがあります。

 

 縮小手術や温存手術が行われるのは、比較的早期のがんで、人きな範囲のリンパ節郭清をしなくても根治性に変わりがない場含や、全く逆に、手術だけでは根治は得られないけれど、‐手術をしないと手術後の生活の質が著しく障害されてしまう場合などに限られます。つまり誰にでもできる、またはするべきものではなく、この点て乳がんなどの場合とは大きく異なるということを間違わないようにしていただきたいのです。

 

 大腸には水分の再吸収と他の貯蔵という働きがあります。盲腸から横行結腸までは主に水

分の再吸収を、下行結腸がらS状結腸にかけては便の貯蔵をそれぞれ受けもっています。直

腸は貯蔵した他がでないようにとどめたり、便意を感じたり、非常に複雑な働きを持ってい

ます。

 手術後、こういった働きを持つ部分がなくなるy』とによって直接でてくる合併症には次の

ようなものがあります。回盲部切除、右半結腸切除、横行結腸切除などれ半分の大腸の手術

をした場合は、小分を再吸収する能力がなくなるために、他が軟らかくなり、便の回数が増

えることがあります。人半結腸切除、S状結腸切除、高位前方切除など左側の人腸の手術の

場合は、便の貯蔵庫が減るわけですから、当然小出しにせざるを得なくなり、便回数が増加

します。一度出ると続けて2~3回排便が続くというのがよくに見られる症状です。このほか

には直腸がんの手術によって神経捐傷が起ヽこるために出現する排尿障害、勃起障害、射精障

害などがあげられます。

一般におなかの手術に共通して言えることは、傷が完全に治ってしまうまでには手術後約

3ヵ月を要するということです。表面に見える傷は約1週問で抜糸もすみ、ドレーン(手術

で体内を瘍つけると、リンパ液などの体液がしみ出してきます。これが多すぎて体内にたま

ると、かえって傷の治りを遅くしたりすることがあります。ドレーンは、シリコンなどでで

きた細い管で、腹壁をつらぬいて体内の傷の部分まですすめておき、この体液の余分なもの

を体外へ誘導します)も2週間囗までにはまずなくなりますが、皮膚の卜にも筋肉どうしを

縫合した傷があり、表面の傷の下に堅い掉のようにさわることができます。この堅さが完令