ストレスでも血液がドロド囗に

 

 四十四歳の女性D子さんは、十九歳の息子と十五歳の娘との三人暮らし。週に五日は一時間以上かけて都心の会社に通っている。デスクワークの仕事は九時から五時まで。残業はなく、肉体的にはそれはどぎつくはない。ただ、人間関係を人一倍気にする性格で、気にし出すと胃がきりきり痛む。最近は胃炎を頻発し、胃潰瘍になりかけていた。ストレスを感じると腸の調子も悪くなり、下痢になる。夜も職場の人間関係や家族の間題が気になって眠れないことが多い。血圧は低血圧で、目ざめても三〇分ぐらいは寝床で体を動かさないと、起き上がれない。コレステロール値も低い。食事は野菜が多く、特にトマトが好きで週に四~五日は食べる。酢の物も好物で、柚子酢を毎日飲んでいる。朝食は牛乳一杯飲めればいいはうだ。好き嫌いが多く、大豆の加工品や豆が苦手だ。D子さんは、幼少のころから貪血ぎみで、よく倒れていた。血を見ると気分が悪くなり、横にならないと採血できないほどだった。検査の当日は、自分の血を見ないようにしていたが……。

 

 結果は、通過時間は一〇四・一秒。流路の入り口に血小板がくっついて流れが滞った。ここへ血小板が凝集し、流路をふさいだ。画面ではほとんど、流れていないように見える。女性の平均の二・三倍時間がかかっている。D子さんはア然とした。同じ人でも、そのときの状態によってかなり流れに差が出るので、再度、測定を試みた。結果は、七九・九秒。前回よりは流れはスムーズになっているものの、やはり、血小板は凝集していた。

 

 食生活からみれば、野菜を中心に、酢の物や柑橘類を多くとっているD子さんは、脂肪や動物性タンパク質の摂取量は少ない。甘いものもさほど好きではない。食生活によって、血液の流れが悪くなっているとは考えにくい。では、何が血液の流れに影響を与えているのだろうか?

 

 第一に考えられるのがストレスだ。D子さんは日ごろから、対人関係を非常に気にするタイプ。日ごろストレスを強く感じると自分白身では思っている。相手がなにげなくいった言葉す態度が、気になり出すと心臓がドキドキして、落ち着いていられなくなる。胃が痛くなり、ひどいときには下痢もする。ストレスが血液の流れを悪くしているのが?

 

 人間の体に肉体的・精神的なストレスがががるとどうなるか? 人間の体にはストレスに耐えられるようなメカニズムが備わっている。それが、内分泌系だ。ストレスを感じると、副腎髄質からはアドレナリンが出る。心臓がドキドキするのもそのせいだ。。アドレナリンの作用は、細胞の活性を高め、細胞が使えるエネルギー源を増やすことだ。グリコーゲンの分解を進めて、グルコースを増やす。また、脂肪の分解を進めて脂肪酸を増やす。そして、フルコースも脂肪酸もすぐ代謝されて、エネルギー物質ATPがつくられる。筋肉の血管は間いて、血流が増加し、筋肉は大きな力を出せるようになる。

 

 アドレナリンは、だから「闘争」あるいは「逃走」ホルモンなのだ。アドレナリンは血液細胞にも同様に作用して、その活性を高める。血小板に対して活性を高めるとは、凝集能を高めることを意味する。白血球に対しては、粘着能を高めることを意味する。アドレナリンが作用すると、血液を流れにくくしてしまうのだ。通常は、それ以上に心臓を強く拍動させ、血管を強く運動させるので、アドレナリンの副作用が間題になることはない。しかし、副作用が前面に出て、心筋梗塞脳梗塞をおこすことも知られている。