幹細胞(ES細胞)の研究発表相次ぐ

 京都大学医学部は02年1月30日に血管再生研究計画を文部科学省に提出した。同研究計画は、ヒト胚性幹細胞から血管を作るというもので、ES細胞を利用した治療研究の実施を国に申請したのは、信州大学(心筋細胞再生)に続いて2番目。

 

 研究はオーストラリアのモナッシュ大学から無償でヒトES細胞を譲り受けて培養、血管再生に取り組むとしている。数年後には、再生した血管を心筋梗塞などの患者に移植する治療を目指す。海外から細胞を譲り受けるのは国内ではまだES細胞作成に成功してい ないためだ。

 

 研究を担当する中尾一和教授らは、マウスを使った実験ではES細胞から血管を再生して移植する手術に成功している。現在はサルのES細胞を使った実験を進めており、技術的な目途はついたという。

 

 一方、同じ京大の再生医科学研哀所は、サルの胚性幹(ES)細胞から、神経伝達物質ドーパミンを分泌する神経細胞弋光を感じる網膜の細胞を作り出寸ことに世界で初めて成功している。ヒトとサルのES細胞は特徴がほぼ同じため、ドーパミン不足で運動障害などの症状が出るパーキンソン病や、網膜の病気などの治療につながると期待される。

 

 笹井芳樹教授らは、マウスのES細胞を、骨髄から採取した細胞とともに培養し、神経細胞へ効率よく変化させる方法を2000年秋に間発。これを同研究所の中辻憲夫教授らが作ったカニクイザルのES細胞に応用した。

 

 その結果、10日から12日でおよそ半分の細胞が神経系の細胞に変化し、約30%がドーパミンを作り出した。この細胞をマウスの脳に移植して2週間後に観察すると、約10%が拒絶されずに残っていた。

 

 培養を始めて3週間後、黒い色素を持った細胞が8%現れてきたので調べたところ、網膜の奥にあって、光を感じる視細胞の働きを助ける網膜色素上皮細胞の特徴を持っていることがわかった。

 

 このように研究は意外な発見につながることが多い。ES細胞を利用した研究は日進月  歩で進んでいる。