外人持ち株比率の上昇が示すもの

 日本の製薬企業にじわりと外資系が参入しつつある。それを示す現象として製薬企業の外国人持ち株比率が上昇していることが挙げられる。01年3月期と9月期を比較してみると大手製薬企業10社のうち7社が3月期時点を上回り、中外製薬山之内製薬は過去最高の44%台に達した。医薬品業界は、各業種の景気低迷にもかかわらず高収益を維持し、投資妙味が相対的に高まったことが理由だが、それだけではない。

 

 株主の国際化は世界市場で生き残れるかどうかを迫る現象であり、株主の中には外資系製薬企業が含まれていると思われるのである。実際、12月にロシュヘの傘下入りを発表した中外製薬は、肘年9月期の時点で外国人持ち株比率44・4%に達していたのである。その意味では、44・7%の外国人持ち株比率である山之内製薬が、いつ外資系と提携・合併するか注目される。外国人持ち株比率は、製薬業界の合併・買収(M&A)を通じた再編を後押しする指標ともとられるのである。

 

 ちなみに山之内製薬は、日本生命に替わってステート・ストリート・バンク・アンド・トラストという外国人投資家の証券保管・管理会社が筆頭株主塩野義製薬中外製薬は、米系投資顧間会社キャピクルーリサーチーアンド・了不ジメントが、それぞれ20%で筆頭株主になっている。製薬企業でも、このような機関投資家が大株主に名を連ねることが多くなった。

 

 機関投資家は、世界に通用する経営、技術を持つ企業に対して、純投資が目的としているが、投資した以上は、投資先の経営に積極的に関与するのが欧米流。日本的な持ち合い株主ではない。

 

 「基本的に外国人株主が増えるというのは怖い部分もあるが、それだけ株主の信頼に応えなければならない、という責務も重い」

 

 と、ある製薬企業の幹部がいっていたが、株主権への意識は欧米の方が断然強い。しかし、金融業界で見られたように美味しい部分だけ容赦なく吸い上げるのも欧来流の経営だ。

 

 日本市場への関心の高さを示す動きはまだある。ヒトゲノムを解読した米セレラ・ジェノミクスが、皿年日本法人を設立したのだ。同社が米国外に現地法人を設立すのは初めて  である。同社は来国では解読デー夕の提供だけを業務としているが、日本法人「セレラ・ジェノミクス・ジャパン」は、制約企業からゲノムを活用した医薬品の研究開発を受託する事業を始める。つまりゲノム創薬を日本市場で展開しようという本格的な進出である。

 

 ゲノム創薬などバイオ産業の日木市場の規模は、1999年の1兆2000億円から2010年には呪一兆円に拡大すると予測されている。実際、ゲノム解読で、体質の違いを遺伝子レベルで解析し、より効果的な医薬品を投与するという「オーダーメード医療」が脚光を浴びているが、このテーラー向け新薬をノバルティス・ファーマ(スイス)、アストラーゼネカ(英)が、一歩先んじて日本市場での発売を目指している。

 

 特定遺伝子がつくるガン増殖に関係しか酵素に作用する抗ガン剤で、ノバルティスファーマは、成人白血病の2割を占める慢性骨髄性白血病アストラゼネカは、肺ガンの8割以上にあたる非細胞肺ガン向けの新薬だ。