紙の沢山とれるポプラと樹木燃料

 東京農工大学の諸星紀幸教授らは、遺伝子組み替え技術を使って紙の原料となる成分の比率を高めた新種ポプラを間発し、農水省森林総合研究所の温室で栽培試験を行っている。

遺伝子組み替え樹木の栽培試験は国内で初めて。

 

 このポプラは、無駄な部分が少ないため紙を効率よく生皮できると期待されている。ポプラを成長させたあと、成分を詳しく分析し、実用化の方向を探るという。

 

 植物の細胞は、リグユンとセルロースで構成されているが、紙の原料になるのはセルロース。教授らは、遺伝子組み替え技術でリグユンの成分を抑えることに成功した。リグユンを合成するときに働くペルオキシダーゼという酵素の遺伝子にふたをして働きを抑えるアンチセンス技術を使って、リグユンが合成される経路を封じたのである。ペルオキシダーゼには複数の働きがあるが、リグユンの合成だけを抑えるため、ふたをする時期や位置を工夫したのがポイントだという。

 

 組み替えポプラの芽を分析した結果、ペルオキシダーゼの働きを封じたポプラは、封じ  ないものより平均で2割、最大で5割ほどリグニンの量が減っていたという。

 

 樹木はトマトなどの野菜に比べて遺伝子組み替え技術の開発が遅れている。細胞に遺伝子を組み込んだ後、細胞を一人前の植物体に成長させるのが難しいからだという。

 

 しかし、スウェーデンなどの森林国では、樹木を次世代燃料メタノールの原料として研究開発が盛んだ。メタノールは硫黄分を含まないため、燃やしても大気汚染を引き起こす硫黄酸化物(SOX)は排出されない。また窒素酸化物(NOX)の発生量も、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(C02)の発生も、石油に比べて断然少ない。

 

 メタノール天然ガスからも生佐されているが、古紙、廃材、プラスチックなどからも作れる。森林伐採の進む地球では、成長の早い樹木を作ることも地球環境に貢献できる。