40代、50代の転職組も少なくない

 細胞検査士の認定試験の受験資格は臨床検査技師の国家資格取得後、病院や養成コースで細胞診の実務を一年以上経験すると得られる。大学の専門コースや、専門学校に通えば、実務経験なしでも認定試験を受けられる。試験は1次、2次とあり、合格率は約25%とハードルは高い。病理組織の基礎知識、医学知識、臨床医学、細胞学、染色方法などを学ぶ。現在、細胞検査土会によると、全国に約6000人の細胞検査士がいる。

 

 是松さんは、学生時代、初めて顕微鏡を通して細胞を見たときとても興味を持ち、 この世界に進んだ。そのような新卒のほか、社会人になってからこの仕事に転職してくる人もいる。とくに、病院の他の検査(血液検査、尿や便検杏など)を扱う臨床検査技師は多い。学生時代に臨床検査技師の資格を取得しておき、40代、50代になってから、細胞検査士の認定試験にチャレンジする人もいるそうだ。

 

 どんな人がこの仕事に向いているか聞いたところ、①好奇心旺盛な人、②形を覚えるのが得意な人、③向上心のある人、の3つの答えが返ってきた。

 

 「たとえば、街を歩いているときに大道芸人がパフォーマンスしているのを見かけたら、私の周りの細胞検査士はみんなそれを兄に行くタイプですね。無数の細胞の中から悪性細胞を見つけるのですから、飽くなき好奇心が必要なんでしょう」

 

 また、細胞を見分けるときの基本形は「丸い形で核が見える」だが、バリエーションが多い。何度もプレパラートと向き合い、判定を間違えるたびに指導者ご指摘されながら、じっくり覚えていかなければならない。経験が仕事の質を高めるので、若い人は長く続けてはしいという。

 

 病院では緊張した日々を送っているので、週末の是松さんは郊外に車で出かけて釣りをしたり、窯元に陶器を買いに行ったりしながら、のんびりと神経を休めている。

 

 細胞診は医師が確定診断や治療方法を決めるための重要なデータにもかかわらず、細胞検査士は昔から「縁の下の力持ち」と言われてきた。が、細胞検査十会ではこの仕事ができて如年になることを機会に、「顔の見える」細胞検査士や仕事をアピールして、細胞診の認知度をさらに高めようとしている。

 

 「日本は、たとえば平成16年度の子宮がんの検診受診率が13・6%で、検査を受けに行く人が非常に少ないことがわかっています。欧米のように、細胞診を自分の健康管理の一つと考えてほしい」

 

 と是松さんは話している。

 

『がん闘病とコメディカル』福原麻希著より 定価780円