放射線技師とはどんな人か

 放射線技師には、がん治療を専門にする担当のほか、次のような仕事もある。

▽診断担当=一般撮影(X線撮影)、CT・MRI、血管造影などの検査をする。

核医学担当=RI(ラジオアイソトープ、放射性同位元素のこと)検査などを担当する。RIを飲んだり静脈注射したりして体内から体外に放射線を放出することで、甲状腺、肝臓、骨、心筋などの腫蕩の形態や機能を調べる。

 

 福井さんは放射線技師歴33年、塩田さんは31年のベテランで、2人ともおもに治療部門を長く担当してきた。福井さんは当初、自衛官として入隊し、戦車に搭載する無線機の通信の仕事をしていたが、放射線技師に向いていると言われ放射線技師養成所に入ったそうだ。塩田さんは高校生の頃、放射線技師について書かれた雑誌を読んで興味を持ち、進学先に選んだ。

 

 近年、放射線療法ががん治療の主力になりうるまで進歩してきたことに、福井さんも塩田さんも大きな喜びを感じているという。

 

 「技師の仕事のやりがいは、たとえば診断担当の場合、技師の能力や努力が病気の発見に大きく影響したり反映したりすることです。治療担当の場合も、同じように努力次第で副作用を少しでも抑えられるようになる。最大の喜びは、放射線治療でがんが治ったと聞くことですね」(塩田さん)

 

 放射線技師という仕事に向くのはどんな人か、という質問に2人はこう答える。

 

 「治療に失敗は許されないので、ひとつひとつ自分が納得しないと前へ進めないような人なら仕事を任せることができますね」(福井さん)

 

 「いまは、検査機器や照射装置が大きく進歩して、医療技術的には医師のどんな要求にも応えられるようになりました。CT専門技師、MRI専門技師などもいるほどです。チーム医療として、技師がカンファレンスご出席してアドバイスを求められることもあるので、機械の知識だけでなく、病気の知識、画像の読影や診断の知識など、臨床現場で多くのことを学べるように向上心を持っている人が必要です」(塩田さん)

 

 そんな2人は、小さい頃から物づくりや機械に対する好奇心や興味があったという。たとえば、瓜田さんは小学低学年のころから、ノコギリやカンナ、ノミなどの大工道具を一通り揃えて使っていたそうだ。さらに、パソコンがマイコンと呼ばれていたころから興味かおり遊んでいたことから、現代の電子化ネットワーク化された医療機器に対しても、それほど抵抗なく知識が生かせているという。福井さんもふだんから家で壊れた家電製品を修理するのが好きだという。

 

 最後に、放射線技師はがんという病気をどう思っているか聞いてみた。

 

 「私の両親や友人にもがんの罹患者が多く、いずれは自分白身もなるかもしれないと身近に感じています。年を経れば多くの人がつき合っていくことになりますが、なかなか、やっかいな病気だと思います」(塩川さん)

 

 「私は自分ががんになったら、臓器の機能が温存できる放射線で治療を受けたいですね。手術で体を切除されることには不安や拒否反応加あります。ただし治療をお願いするにあたっては、治療医、技師、システムのレベルの高さが重要です」(福井さん)

 

 こんなふうに、医師や技師が患者の心や体に思いをめぐらせながら、高い技量と新しいアイデア、細かい配慮があいまって放射線治療は発展している。

『がん闘病とコメディカル』福原麻希著より 定価780円