翻訳会社よりもソースクライアントのほうが支払いをきっちり行う

 

 

 

興味深いことに、私は過去14年間に翻訳会社と仕事をしたことがない。そこには常に単価の問題があり、訳文への不一致などの問題もあるからだ。翻訳会社が最終的に支払いを行わないという最悪のケースもある。私が提示した単価を「高すぎる」とわざと文句をいうところもある。翻訳ディレクトリに関しては、5つ以上の翻訳プラットフォームを試したが、私の最低単価で発注するところはなく、それどころか単価は下がり続け、翻訳の仕事は東欧から中東へと下請けが繰り返されている。さらに納期はアホらしいほど短くなり、その単価も極端に低くなっている。

 

そのため、直接的なアプローチをかけて、ソースクライアントを探さなければならない。一つの案件を一人の翻訳家が引き受けるのに、ソースクライアントと我々翻訳家の間に複数の翻訳業者がわりこむのは正しいことではない。受注するための営業は自分自身が行うべきである。受注した仕事を統計的にチェックすれば、翻訳会社から受注した仕事の70%は小さな案件であることがわかるだろう。そのような案件は、技術マニュアルや技術文書、ウェブサイト、法的文書などである。

 

 

さらに重要な事として、ソースクライアントはあなたの仕事に対して尊敬の念を表し、大抵の場合は信頼できる相手であり、支払いをきっちり行う。例外もあるかもしれないが、無数にある翻訳会社に比べれば、かなり良い取引相手となる。 

 

そこでは忠実性が非常に重要となる。翻訳会社は自社に登録している翻訳者をすべて把握していないが、クライアントはあなたの能力を知ろうとする。翻訳業者にとってはあなたは番号でしかない。あなたが仕事を受けなければ、他の誰かがやるだけである。私は今、ITC Traductionsに4年間登録しているが、1000ワードほどの案件のメールがが1年間に4、5回送られてくるだけであり、しかも同日中に納品しろと言ってくる。

 

他の翻訳会社であるCompass Translationは登録翻訳者全員への一斉メールで プロファイルをアップデートしろと言ってくるが、それに素直に従うと、次は「単価を下げろ」と言ってくる。もちろん、これは訳者の能力を考慮したものではない。私は5年間登録しているが、一度も受注したことがない。この会社がやることは私がこの会社のデータベースに記入した(低い)希望単価をさらに下げろと言ってくるだけである。

放射線技師とはどんな人か

 放射線技師には、がん治療を専門にする担当のほか、次のような仕事もある。

▽診断担当=一般撮影(X線撮影)、CT・MRI、血管造影などの検査をする。

核医学担当=RI(ラジオアイソトープ、放射性同位元素のこと)検査などを担当する。RIを飲んだり静脈注射したりして体内から体外に放射線を放出することで、甲状腺、肝臓、骨、心筋などの腫蕩の形態や機能を調べる。

 

 福井さんは放射線技師歴33年、塩田さんは31年のベテランで、2人ともおもに治療部門を長く担当してきた。福井さんは当初、自衛官として入隊し、戦車に搭載する無線機の通信の仕事をしていたが、放射線技師に向いていると言われ放射線技師養成所に入ったそうだ。塩田さんは高校生の頃、放射線技師について書かれた雑誌を読んで興味を持ち、進学先に選んだ。

 

 近年、放射線療法ががん治療の主力になりうるまで進歩してきたことに、福井さんも塩田さんも大きな喜びを感じているという。

 

 「技師の仕事のやりがいは、たとえば診断担当の場合、技師の能力や努力が病気の発見に大きく影響したり反映したりすることです。治療担当の場合も、同じように努力次第で副作用を少しでも抑えられるようになる。最大の喜びは、放射線治療でがんが治ったと聞くことですね」(塩田さん)

 

 放射線技師という仕事に向くのはどんな人か、という質問に2人はこう答える。

 

 「治療に失敗は許されないので、ひとつひとつ自分が納得しないと前へ進めないような人なら仕事を任せることができますね」(福井さん)

 

 「いまは、検査機器や照射装置が大きく進歩して、医療技術的には医師のどんな要求にも応えられるようになりました。CT専門技師、MRI専門技師などもいるほどです。チーム医療として、技師がカンファレンスご出席してアドバイスを求められることもあるので、機械の知識だけでなく、病気の知識、画像の読影や診断の知識など、臨床現場で多くのことを学べるように向上心を持っている人が必要です」(塩田さん)

 

 そんな2人は、小さい頃から物づくりや機械に対する好奇心や興味があったという。たとえば、瓜田さんは小学低学年のころから、ノコギリやカンナ、ノミなどの大工道具を一通り揃えて使っていたそうだ。さらに、パソコンがマイコンと呼ばれていたころから興味かおり遊んでいたことから、現代の電子化ネットワーク化された医療機器に対しても、それほど抵抗なく知識が生かせているという。福井さんもふだんから家で壊れた家電製品を修理するのが好きだという。

 

 最後に、放射線技師はがんという病気をどう思っているか聞いてみた。

 

 「私の両親や友人にもがんの罹患者が多く、いずれは自分白身もなるかもしれないと身近に感じています。年を経れば多くの人がつき合っていくことになりますが、なかなか、やっかいな病気だと思います」(塩川さん)

 

 「私は自分ががんになったら、臓器の機能が温存できる放射線で治療を受けたいですね。手術で体を切除されることには不安や拒否反応加あります。ただし治療をお願いするにあたっては、治療医、技師、システムのレベルの高さが重要です」(福井さん)

 

 こんなふうに、医師や技師が患者の心や体に思いをめぐらせながら、高い技量と新しいアイデア、細かい配慮があいまって放射線治療は発展している。

『がん闘病とコメディカル』福原麻希著より 定価780円

 

 また、2002年からは、植松さんの発案で「四次元照射」にも取り組んでいる。四次元照射とは、三次元照射に動きを加えたもの。これまでの照射では、呼吸を止めてもらったり、浅く呼吸してもらったりしながらある範囲にがんが来たときに放射線をかけるなど工夫していたが、それでも患者が深い呼吸をした場合、最大6センチも照射位置が動いてしまう。そこで、呼吸に合わせてチェイサーががん病巣を追っていき、常に照射範囲の中心にがんを捉えるというしくみの装置を開発した。

 

 「いわば、飛んでいる鳥を望遠鏡で見ている場面を想像しかときに、鳥がどのような飛び方をしても常に望遠鏡の視野の中央にくるようにするというイメしシです。戦闘機のヤーダーが、常に標的を中心に狙っていることと同じですね」(福井さん)

 

 その結果、より治療精度が高くなり、さらに治療時間も4分の1~5分の1程度まで短くなったそうだ。患者も楽に治療を受けられる。

 

 現在、植松さんと福井さんは鹿児島県・UASオンコロジーセンターで四次元照射の治療をしている。「どうしても手術はイヤ」という患者がインターネットや記事などで二次元照射や四次元照射の情報を集めて、鹿児島に来るそうだ。ただし、四次元照射には健康保険は適用されない。

 

 

 

がん治療における放射線技師とは

 

 〈放射線治療医〉患者の病状に合わせて、どんな種類の放射線をどの範囲で、どのように当てるかについて放射線治療の計画を立てる。患者に治療耐画とその効果についてインフォームドコンセントを取った後、最終的に治療の方向性を決定づける。治療後は経過観察をする。

 

 〈放射線技師〉治療現場で医師の指示通り、安全に正確に照射できるよう遂行する。照射中の患者の容態にも気を配る。

 

 とくに、放射線技師がもっとも時間を費やし神経をとがらせるのは、照射前に装置が正確に動くかチェックしていく作業だという。放射線の干不ルギー量は正しいか、照射位置のずれは起こらないかなど、細かい事柄をひとつひとつ入念に確認する。治療の成功不成功は、装置の管理にかかってくるからだ。

 

 「もし、放射線を照射した位置とがんの場所がO・5~Iミリずれていたことで、治療後、がんの細胞増殖が確認されたら、それは治療の失敗です。絶対に許されません。このため、機械が正しく動いているか信用できるまで、何回も入念に精度測定を繰り返します」(福井さん)

 

 たとえば、放射線の干不ルギー量測定では、コンピュータにデータを打ち込んだ後、人間の代わりに模擬人体(人体と放射線の吸収・散乱が等しい物質でっくられている模型。ファントムと呼ばれる)をベッドに置き、照射実験を繰り返す。人体は臓器によって密度が異なるため、患部に合わせて干不ルギーの通り具合を計算しなければならない。技師としての知識が必要な場面である。患者の体の中で、放射線量がどのように分布しているかを把握していくことも重要だ。治療計画装置で分布計算するとともに、模擬人体を使って照射実験を繰り返し、より正確な把握に努める。

 

 さらに、治療中は機械を動かしながら、常に患者の容態に細心の注意を払う。技師はどんなことに配慮しているのか。

 

 「最近は患者さんが自ら情報を集め、治療に対して積極的に参加される方が多くなりました。とはいえ、やはり、がんになったことに対する不安や恐怖などを持っている方は多いですね。そんなときは、がんば治る可能性のあ・る病気なので、改善を期待して治療を続けるよう多くの情報を繰り返し伝えて、精神面をケアできるよう留意しています。また、患者さんがもっとも気になる放射線治療の副作用について、いまでも間違った情報が多いため、『この治療では、どのような障害の可能几があるか』など具体的ご説明して、患者さんの不安を取り去るように努めています」(塩田さん)

『がん闘病とコメディカル』福原麻希著より 定価780円

 

40代、50代の転職組も少なくない

 細胞検査士の認定試験の受験資格は臨床検査技師の国家資格取得後、病院や養成コースで細胞診の実務を一年以上経験すると得られる。大学の専門コースや、専門学校に通えば、実務経験なしでも認定試験を受けられる。試験は1次、2次とあり、合格率は約25%とハードルは高い。病理組織の基礎知識、医学知識、臨床医学、細胞学、染色方法などを学ぶ。現在、細胞検査土会によると、全国に約6000人の細胞検査士がいる。

 

 是松さんは、学生時代、初めて顕微鏡を通して細胞を見たときとても興味を持ち、 この世界に進んだ。そのような新卒のほか、社会人になってからこの仕事に転職してくる人もいる。とくに、病院の他の検査(血液検査、尿や便検杏など)を扱う臨床検査技師は多い。学生時代に臨床検査技師の資格を取得しておき、40代、50代になってから、細胞検査士の認定試験にチャレンジする人もいるそうだ。

 

 どんな人がこの仕事に向いているか聞いたところ、①好奇心旺盛な人、②形を覚えるのが得意な人、③向上心のある人、の3つの答えが返ってきた。

 

 「たとえば、街を歩いているときに大道芸人がパフォーマンスしているのを見かけたら、私の周りの細胞検査士はみんなそれを兄に行くタイプですね。無数の細胞の中から悪性細胞を見つけるのですから、飽くなき好奇心が必要なんでしょう」

 

 また、細胞を見分けるときの基本形は「丸い形で核が見える」だが、バリエーションが多い。何度もプレパラートと向き合い、判定を間違えるたびに指導者ご指摘されながら、じっくり覚えていかなければならない。経験が仕事の質を高めるので、若い人は長く続けてはしいという。

 

 病院では緊張した日々を送っているので、週末の是松さんは郊外に車で出かけて釣りをしたり、窯元に陶器を買いに行ったりしながら、のんびりと神経を休めている。

 

 細胞診は医師が確定診断や治療方法を決めるための重要なデータにもかかわらず、細胞検査士は昔から「縁の下の力持ち」と言われてきた。が、細胞検査十会ではこの仕事ができて如年になることを機会に、「顔の見える」細胞検査士や仕事をアピールして、細胞診の認知度をさらに高めようとしている。

 

 「日本は、たとえば平成16年度の子宮がんの検診受診率が13・6%で、検査を受けに行く人が非常に少ないことがわかっています。欧米のように、細胞診を自分の健康管理の一つと考えてほしい」

 

 と是松さんは話している。

 

『がん闘病とコメディカル』福原麻希著より 定価780円

 

ひとつの細胞を複数の専門家が判定する

 細胞診は病理診断のひとつだ。病理とは、病気の原因を突き止めたり、病変がどのようにできたかを科学的に研究したりすること。細胞診断のほかに組織診断と解剖検査がある。組織診断は病理組織(手術で摘出された臓器や内祝鏡で採取された組織切片)の診断、手術中の迅速診断をする。解剖検査は亡くなった方の遺体を解剖して、病気の進行や治療効果、死囚などを診断する。

 

 病理部では、ふっう、病理専門医、細胞診専門医、臨床検査技師(細胞検査士を含む)が働く。病理専門医は病理組織を診断する。細胞診専門医は細胞検査技師の判定について、診断を確定する。臨床検査技師は、血液、尿、超音波、心電図、脳波などの検査の判定、病理組織の標本作製、細胞診の判定などをする。細胞検査士は臨床検査技師の中の専門職になる。

 

 細胞検査士はどのように細胞を判定していくのか。

 

 竹工社会保険病院(さいたま市浦和区)には1日50~60人分、多いときには100人分の検体が運ばれる。細胞検査士は、まず顕微鏡でプレパラートを観察しながら細胞の異型度を識別する。ふつうは、1枚のプレパラートを5分程度で処理するが、場合によっては、1枚を30分以上見続けなければならないこともあるという。

 

 「とくに、肺がん検診の喀痰細胞診はたくさんの良性細胞の中から、ごくわずかな悪性細胞を見つけ出すため難しいですね」

 

 悪性と判定された標本はがんの種類も判断される。がんの悪性度や浸潤度(がんの広がり)がわかることもある。その後、細胞検査士の判定について、細胞診専門医が診断書を書き、主治医ご報告する。

 

 「細胞検査士は細胞を四六時中見ていますから、悪性細胞を探す専門家です。一方、細胞診専門医は細胞検査士が出した判定について、医学の知識を含めて総合判断します」

 

 たとえば、細胞検査士が「腺がん細胞(がん細胞の種類の一つ)が見つかりました」と報吉する。細胞診専門医は「この場所に腺がんができるかな」という別の視点で見る。

 

このように、一つの細胞を役割の異なる二人が判定し診断に結びつける。

 

 細胞診では、もちろん100%の正確さを目指している。細胞検査士2人が判定するダブルスクリーニングをとっている病院も多い。が、それでも全体の約数%の検体には良性か悪性か、どうしても判別困難な細胞があるそうだ。是松さんは言う。

 

 「悪人でも、すごく悪そうな顔をしている人と、一見、とても人の良さそうな顔をした悪人がいますよね。細胞も同じです。その善人面した悪人をいかに的確に見分けるかが、私たちの腕の見せどころです」

 

 患者にとって、診断の間違いは人生を左右する。

 

 「この仕事は決してごまかしてはいけない。つまり、わからないものはわからないとしたうえで、疑問点はスタッフ、専門医と納得いくまでディスカッションして判定します」

 

 一番避けるべきことは、がん細胞なのに「異常なし」と診断すること。それをなくすため、顕微鏡を通していくら見ても、良性か悪性か判断がつかない場合は「疑陽性」の判定を出し、今度は体内の組織を採取して顕微鏡で判定する手順を踏む。組織を採取する検査は、体に痛みをもたらすことが多いので、まず細胞で診断することが多い。一方、「がん細胞と診断されたが、切除してみたらがんではなかった」ということもある。

 

 「私も30年問、日々、細胞を見続けていますが、やはりどうしても判定が微妙な細胞というものはあ・ります。100%の診断率を目指していますが、さすがに、そんなときは限界を感じますね。そのため、ほとんどの病院ではリスクマネジメントをしているものです。たとえば、臨床医の画像診断や血液検査の結果と細胞診の判定が異なる場合は、主治医が必ず再検査して、部の総合判断で結果を出すなど、チームワーク体制で臨みます」

 

 是松さんでも、かつて細胞検査士になったばかりのころは、たびたび先輩や臨床医から判断の間違いを指摘された。

 

 「初心者だったころの経験は、いまでも忘れませんね。どんな間違いだったか、そのときの細胞を絵で書くこともできます。患部を切除した医師には『がんがありましたよ』と言われましたが、正常細胞に近い形のものだったので、当時はどうしてもそれががん細胞に見えなかったのです」

 

 こんなに良く仕事を続けることができたのは、そういう経験がめったからという。「自分は何度見ても、良性か悪性か判断できない。でも、先輩はこともなげに『それはがん細胞ですよ』と言う。見える人には見えてくるんだとわかったときから、どんどん勉強するようになりました」

 

 日進月歩の医療の世界で働くには、ベテランになっても専門的な勉強会には出席しなくてはならない。是松さんも毎月1~2回、学会やセミナーで指導したり勉強したりしているという。細胞検査上の資格は4年ごとに更新もしなければならない。

 

『がん闘病とコメディカル』福原麻希著より 定価780円

 

武田薬品工業

 武田薬品工業(本社/大阪市)の連結中間決算は、売上高5105億円(前年同期比7・7%増)、経常利益1864億円(同22・2%増)、純利益1308億円(同45・3%増)という結果となった。通期では1兆円の売上・局になる見込み。 国内では、高血圧症治療剤「ブロプレス」と消化性潰瘍治療剤「タケプロン」の売上が、ゲノム創薬中心に外資との合併進むが前年同期比からそれぞれ121億円、63億円増加した。「タケプロン」は、2000年に「ヘリコバクター・ピロリ除菌および除菌の補助を目的とする3剤併用療法」および「逆流性食道炎維持療法」の効能追加承認を受けており、これが売上増につなかっか。

 

 高コレステロール血症治療剤「セルタ」、脳循環代謝改善剤「カラン」が販売中止となったが、医療用医薬品事業においては、2215億円となり、前年同期から179億円の増収となった。

 

 海外では、「武田ファーマシューティカルズ・ノースアメリカ㈱」の糖尿病治療剤「アクトス」が販売間始から3年目を迎え、売上高は前年同期から2億6800万ドル増の5億4200万ドルとなった。そのばかの国際戦略製品である消化性潰蕩治療剤「ランソプラゾール」(海外商品名、以下同)、高血圧症治療剤「カンテサルタン」、前立腺癌・子宮内膜症治療剤「リュープロレリン」も、それぞれ売上が増加した。

 

 ヘルスケア事業では、4月に医薬部外品アリナミン7」を発売し、また「ファルアッア社」との提携により、同社の禁煙補助剤「二コレット」を皿年9月に発売している。

 

 化学品事業は、肘年4月にウレタン事業を譲渡しか影響(310億円の減収)を含めて、売上高は前年同期比313億円減少し、255億円となった。フードービタミン事業でも、ビタミンバルク事業を譲渡した影響(36億円の減収)もあり、売上高は、前年同期から12億円減少し、353億円となった。また2000年6月には、動物用医薬品事業を譲渡した影響(15億円の減収)もあり、「その他の事業」の売上高は前年同期から32億円減少し、191億円となった。

 

 同社は「人々の健康とすこやかな生活に貢献する」ことを経営理念にしている。2001年には、

・自社医療用医薬品売上高「1兆円構想」の実現

・世界的製薬企業に向けた「成長の源泉」の創出

・医薬外事業の自立

・世界的製薬企業としての「制度・仕組み」の構築

 

 を基本方針とする「01-05中期計画」をスタートさせている。

 

 そのほか2001年7月、三菱東京製薬㈱(現三菱ウェルファーマ㈱)との間で、三菱東京製薬が創製した心不全心筋梗塞などの心疾患治療薬「MCC-135」の経口剤に関するライセンス契約を締結し、日本およびアジアの一部を除く全世界での開発および販売権を取得した。

 

 また2001年11月には、バイオベンチャー企業の研究成果を、将来同社の研究に導入・活用することを目的として、持ち株会社を通じた全額出資子会社であるベンチャー投資会社「武田研究投資㈱」を来カリフォルニア州に設立している。

 

 

各社相次ぎ発明報酬金制度を設置

 これまで製薬企業は、確かにある意味ではぬるま湯に浸かっていた。それは薬価基準制度というシステムに守られていた面もあるし、国内で医薬品を売っていれば、不況とは関係なく、食い扶持は得られていたという側面もあった。長引く不況でも、病気は減らないからだ。しかし、製薬企業の経営を大きく左右する薬価基準の度重なる大幅引き下げ、外資系の攻勢の前に大きな岐路に立だされている。2002年度は医療機関の収入である診療報酬も平均1・3%と戦後初めて切り下がったほか、薬価も平均5%引き下げられ、これが業界の試算だと4000億円の減収になるという。

 

 ここに来て製薬企業のトップの方針に違いが生している。武田薬品工業の藤野政彦会長は、「海外の巨大製薬企業に対抗するのに(海外企業と)同し戦術では勝てない」(01年7月7日、日本経済新聞)として、数十哲円という資金力にものをいわせる欧米の研究手法とは一線を画寸方針に変わりないことを強調。そして国内企業が大型投資を打ち出していることについて、「世界の動きに毒されている」とまでいいきる。

 

 一方、ロシュの傘不入りした中外製薬の永山浩社長は、「バイオや抗体に関する研究で 世界最強のタッグチームを作ることができた。提携で大きな相乗効果を期待できる和手が国内にいなかった。中外への過半数の資本参加はロシュ側の要望だったが、同時に、経営の独立性と研究開発体制の維持を確約してくれた」と述べ、中外製薬の選んだ道は選択肢の一つだったことを強調した。世界再編の大きなうねりが製薬企業トップに決断を迫る時代になってきた。

 

 ともあれ製薬企業の命運を左右するのは、年問売上百億円以上を稼げる新薬にはかなわない。海外へ進出しても売るものがなければ意味がない。

 

 年間数千億円の研究間発費を投じて新薬に開発に取り組む欧米の製薬企業に対して、日本の製薬企業の研究開発費は、今後上積みしようといっても年間数百億円(山之内が最高で500億円)と一桁違う。

 

 限られた研究費の中で世界に通用する新薬を創るには、研究者の意欲が欠かせない。特許が個人ではなく、会社に帰属する日本社会では、この意欲を引き出すことに腐心している。最初に発明報酬制を導入したのは98年の武円薬品工業たった。研究・開発に携かった社員に年間最高1000万円を貢献度に応じて分割、5年間支給するというものだ。その後、三共加工製品当たり最高6000万円、田辺製薬はヒット製品の年間売上の1%を3年間にわたって分配するという制度を創設した。

 

 エーザイ塩野義製薬が報酬制を採用した。エーザイでは、新薬開発に貢献した研究者全員に総額で1億円以上を支給するという高額なもの。ただ貢率度に応じて分配されるが、内訳は、発明報酬金最高5000万円、発売から5年間の新薬の売上のO・05%を分配、さらに新薬の開発・製造に貢献しか研究者には、「ストックオプション」(自社株を一定の価格で購入する権利)を与える。同社では、97年に発売した「アリセプト」(アルツハイマー型痴呆症治療薬)にまでさかのぼって適用(発明報酬金とストックオプションを除いて)する。同商品の5年間の売上は約2000億円で、約1億円を約40人に貢献度に応じて分配された。塩野義も同様に、売上のO・05%を分配する。