大腸がんのステージは壁深達度、リンパ節転移、肝転移、腹膜播糖、遠隔転移の5因子によって確定されます。壁深達度とは大腸の壁のどのくらいの深さまでがんが入り込んでいるかということです。大腸のうち、結腸と直腸のL約半分までは5枚のあわせ板のような構造になっており、内側から順に粘膜、粘膜下層、筋肉、漿膜下層、漿膜といいます。粘膜までにとどまるものをm、粘膜下層に入っているけれど筋肉には達していないものをsm、筋肉に入っているけれど漿膜下層には達していないものをmp、漿膜下層に達しているけれど漿膜を破って外にはでていないものをss、漿膜を破って腸の外に顔を出しているけれど腸の外の臓器には達していないものをse、腸を破って外の臓器に食いついているものをs・1と略廿言言います。下半分の直腸は5枚の構造のうち、一番外の漿膜がなく4層の構造で、ssに相当するものをal、seに相当するものをa2、s・1に相当するものをa・1といいかえます。

 

 リンパ節というのは、体を異物から守る働きをするリンパという体液が流れるリンパの途中にいくつもある関所のようなもので、人腸に入る血管周囲にも見られます。リンパの流れに入ったがん細胞はどんどん大腸から心臓方向に進んでいこうとする傾向を持っているので、大腸から離れたリンパ節に転移しているほどがんは進行しているのです。これを分類するために、大腸に近い方から順に4群に分けます。肝臓は左右に大きく分けられ、片側だけに転移のあるものをHI、両側にまたがって転移はあるが4個以内のものをH2、両側にそれ以上の転移があるものをH3といいます。腹膜播糖はがんの近くにだけ見られるものをP1、一部遠くにも見られるものをP2、多発性にあちこちに見られるものをP3といいます。遠隔転移とは肝臓以外の臓器に転移していることを言い、肺、脳、骨などが転移しやすい臓器です。

 

 以上5因子を判断してステージを決めるわけですが、手術前には外からできる検査でこれを予想し、手術後には手術の所見で考えます。手術前や手術後の所見による各因子の判断はまだ確実なものではありません。

 

 ステージの確定はあくまで病理組織学的に、つまり顕微鏡検査の結果で初めて決まります。ステージ分類というのは手術ができるかできないかを決めるためにするのではなく、どちらかというと手術後の治療計画や、予後調査(予後とは、治療を受けたあと、一定期間後に治癒しているか、再発しているかということ)のためにするものです。手術の時に完全に取りきれていても、進行がんの場合は少なくとも5年間は常に再発の危険性がつきまといます。ステージ分類は予後調査などによってこれまでも何度か改訂されており、どのステージなら再発しやすいかという観点も重要視されています。大腸がんに特徴的なのは、壁深達度が進んでいても、リンパ節転移や肝転移、腹膜播糖、遠隔転移などがなければかなり根治できる可能性が高く、ステージも小さく設定されているということです。ステージに応じた手術後の治療が最も大切だということですが、同しステージの人がみんな同じ治療をするわけではありません。中には、ステージ111でも抗がん剤治療をした方がいい人もいますし、ステージ第旦早◆がんの発見-初回治療の全て〈大腸