EUの医療制度の基本にある考え

ヨーロッパ各国の医療制度を知ることは、日本の医療制度のあり方を考える上で参考になるでしょう。よーろっぱにおけるいりょうせいどもでるは、にほんのいりょうせいどとはことなるいくつかのもでるにたいべつできます。また、現在進められている医療制度改革の方向と内容も、日本とは異なったものとなっています。これはヨーロッパ各国の歴史、社会、文化、政治が異なるためであり、当然だと言えます。すなわち、医療制度モデルとは、小気宇民や人々が、どのような社会原則、財政システム、医療供給耐性で医療サービスを提供するかということを、人々自身の主体性を持って決めていくものであるということが大変重要だということです。
これは単に医療分野にとどまる問題ではありません。現在、日本でも新自由主義的な考えが大きく政治や社会の仕組みのあり方に影響を与えていますが、社会制度とは国民自身が主体的に考えけってしていく課題なのだという意識が、今こそ必要とされているのではないでしょうか。ヨーロッパと日本の大きな違いの一つは、国民主権の行使という民主主義の実践度の問題、すなわち、国民がもっと主人公になるべきだという問題です
グローバル化の中でヨーロッパ各国は、統合することによってその勢力を維持拡大しようとしてきました。ヨーロッパ通貨統合や単一市場化という軽罪目標を達成してきていますが、もう一つ大事なことは「社会的ヨーロッパ」というスローガンです。これは、ヨーロッパ市民はどこでも同じ市民的権利を享受できることを目指したもので、そのためにヨーロッパ全体での社会保障、医療などの共通化をEU社会政策として進めています。
EUの医療制度の基本にある考えは、「医療の平等」と「普遍主義」原則です。医療の平等とは、同じ病気には同じ治療が受けられる権利だと言えます。また普遍主義原則とは、金持ちでも貧乏人でも医療を受けられるという原則です。いずれも、「地獄の沙汰も金次第」という不平等を避ける考え方です。これらと反対の考え方は、「医療の不平等」や「選別主義」を認めるという考え方と言えます。また、EUの医療制度の基本的考えは、「社会的連帯」に基づくというものです。人々は社会的な集まりの中で生きており、お互いに助け合うことが大切であるという考えです。
最近の日本のように、他人に厳しい社会、個人の責任や権利を排他的に重視するという、孤立化した個人主義や、それに基づく自己責任論と言う社会的に無責任な言い方が見られる現象は、個人主義が社会的連帯と結び付いているヨーロッパの状況とは全く違ったものと言えます。医療制度のあり方を考える上でも、表面的な類似と本質的な違いというものを区別してみていく必要があるでしょう。
医療について、ヨーロッパ連合の法律ともいえるEUアムステルダム協定第152条では次のように明記しています。
「人の健康を高いレベルで守ることで、EUのすべての加盟国の政策に定義し、活動として実施しなけえればならない」
またEU基本的人権宣言第35条では、次のように言っています。
「誰でも予防的医療を受ける権利を有し、また国内法と実施規則の定めに基づいて医学的治療を受ける権利を有する」
またEUの医療法案では、次のように書いてあります。
「社会的ヨーロッパの要として、ヨーロッパにおける医療の平等と医療サービスを受けるという普遍主義という独自の原則がある。それにしたがって、加盟国が医療制度を組織し提供する権利を尊重する」
このようにヨーロッパ連合では、その社会政策のスローガンとして「社会的ヨーロッパ」を掲げ、ヨーロッパ市民が同一の市民的社会的権利を享受できることを目指しています。グローバル化の時代にあっては、人々の基本的諸権利もグローバル化しなくてはならないという考えは当然でしょう。