田辺三菱製薬


現在の田辺三菱製薬は、抗体医薬品で関節リウマチやクローン病の治療薬として使われるレミケードで収益を牽引しています。塩野義製薬ほどではありませんが、典型的なワンプロダクト・カンパニーです。
田辺製薬は、1993年に米セントコア(その後ジョンソン・エンド・ジョンソンが買収)よりレミケードを導入し、2002年にクローン病治療剤として発売し、2003年に関節リウマチ治療の適応拡大を取得し売上げの大型化に拍車がかかりました。
レミケードは、炎症性疾患の発症、増悪に関与する「TNF-α」と呼ばれる体内物質の作用を阻害し、関節リウマチやクローン病の炎症を劇的に改善する薬です。2007年度の売上高は286億円に達しましたが、早期に500億円達成をめざす考えです。
田辺製薬は合併前後の早期退職実施などでコスト削減に努めていますが、抜本的な生産体制の見直しやMR2400名をはじめとする人員の適正配置は今後の課題です。
海外事業については、腎領域の高リン血症治療剤「MC1-196」と慢性腎臓病治療剤「MP-146」で橋頭堡を築き、その後に糖尿病治療剤「MP-513」(DPP-IV阻害剤)と「TA-7284」で本格稼働させる計画です。
腎から糖尿病へ入ることは理にかなっていますが、糖尿病治療剤の開発はハードルが高くなっています。開発失敗のリスクをいかに分散するかが大切になって来るでしょう。ジェネリック医薬品については、長生堂製薬の買収などを踏まえて2010年度までに売上高140億円へ引き上げる方針です。
以上のように、田辺三菱製薬の概ね順調にスタートを切ったと言えます。ただし、クリティカルマスには到達していません。海外での本格展開を目指すのであれば、2015年度の海外売上高1000億円以上という目標を海外買収などを介してでも、前倒しで達成しなければ遅すぎます。
そしていうまでもなく、レミケードに続く成長製品を最低でも2つ国内で導入する必要があります。開発工機の新薬開発パイプラインはまだ玉不足であり、導入品の獲得と自社創薬のスピードアップが求められています。
田辺三菱製薬は重点開発領域として循環・代謝、精神・神経、免疫・呼吸器、肝疾患・眼を挙げていますが、たとえば現時点で抗癌剤は新薬開発パイプライにはありません。年間800億円近い研究開発費を支出できるとしても、研究開発の守備範囲をもう少し絞るべきではないでしょうか。