臓器移植と再生医療とクローン動物

 植物も動物も、すべての生物が細胞からできている。受精卵から細胞が分化し、肝臓、腎臓、心臓、骨格、神経、血管などの各細胞が生まれる。臓器移植といった場合、私たちがすんなり受け付けているのが、輸血である。その輸血にしても、個体と個体との違いは血液型の違いになり、血液型が異なれば輸血(臓器移植)はできない。異なった血液型を輸血すれば、それは最悪の場合死亡につながる。

 

 ヒトは自己と他を識別する能力を持っており、これが臓器移植の場合、最大のネックになっている。裏返してみれば、それはヒトとしての他の異物の侵入を防ぐ防衛システムなのである。免疫監視機構というヒト本来に備わっている機能は、他人の臓器を排除し、その範囲は親子、兄弟にも及ぶ。一卵性双生児でない限り、完全に主要組織適合抗原群(MHC)が一致することはなく、臓器移植の手術そのものが成功しても、その後の拒絶反応が心配されるわけである。

 

 これが自己細胞から増殖された臓器移植であるならば、間題はない、というのが究極の再生医療である。

 

 02年工月3日、英PPL社は、ヒトに移植しても拒絶反応の少ないクローン豚を5匹誕生させた。今回のクローン胚は臓器移植用に開発されたものだ。クローンとES細胞の技術を組み合わせれば、患者が自分の体細胞を使ってクローン胚を作り、そこから分化する能力のあるES細胞を取り出寸ことは、理論的には可能だ。

 

 しかし、子宮に戻せば一人の人間となる胚を臓器の手段にすることになり、生命倫理上間題があり、英国を除いてヒトクローン胚の作成は、禁止されている。これに対し、脉はすでに心臓弁がヒトヘの移植に使われたほか、糖尿病治療に不可欠なインスリンも抽出されてきた。免疫拒絶反応の克服に向けての研究が進めば、臓器不足解消の決め手になるかも知れないのが、クローン豚だと評価は高い。