皮膚再生はここまで進んだ

 この分野では、皮膚の再牛医療が一歩先んじている。皮膚科や形成外科を中心に、主に火傷などの治療で発展してきた。皮膚細胞は、シャーレ上で培養し、単層に増殖させることは可能だが、コラーゲン布(生体たんぱく質で作った布)や膜を基盤として、その上に表皮細胞を培養、増殖させることで再生皮膚を作ることができる。それを患部に移植するとコラーゲン膜は、時間経過とともに体内に吸収され、細胞だけが生着し、本来の皮膚となって再生される。

 

 切り傷や擦り傷なら、たいていI週間以内で傷口は治り、数ヶ月も経ては傷口も分からなくなる。皮膚は身近に実感できる再生能力を体現する組織だ。ただし、あまりにも深い傷口は再生できず、人工皮膚培養、皮膚移植にならざるを得ない。

 

 皮膚は、体表面側から表皮、真皮、皮下組織で構成されており、表皮と真皮の間には基底膜がある。また表皮の最外層は、表皮細胞が角質化した角質化細胞で覆われている。皮膚は、外界からの化学的・細菌的な攻撃に対ずる重要な臓器であり、体表面積の半分以上が損傷を受けると、生命の危険に侵されることになり、すぐに救命措置が必要となる。医学的には「熱傷救急」という。

 

 皮膚再生の場合は、角質化表皮細胞を人工培養でき、これを培養表皮(表皮細胞を培地中で人工的に培養し、シート状に増殖させたもの)と呼んでいる。自家培養表皮は拒絶反応が起きず、多くの熱傷患者が救われている。ジェンザイム・ティッシュ・リペアー社によって販売されている。

 

 真皮にある繊維芽細胞を培養したものが培養真皮。繊維芽細胞は、角質化細胞のように自らシート状になる性質がないので、培養してシート状にするには、何らかの担体が必要になる。この担体をマトリクスという。培養表皮などは単層の薄い膜であり、破れやすい。そこで担体であるコラーゲンなどで作った布の上で増殖させることにより、丈夫で扱いやすい培養表皮を得ることが可能になる。

 

 コラーゲンを酵素処理したアテロコラーゲンのスポンジや生体吸収性の高い分子などがマトリクスとして用いられている。このマトリクスに繊維芽細胞を播き、培養したのが最近の培養真皮。培養真皮を傷口に貼ると、しだいに人エマトリクスが吸収され、繊維芽細胞が真皮様マトリクスを再生する。

 

 繊維芽細胞から分泌される塩基性繊維芽細胞増殖因子などのサイトカインの働きで、いくつもの層が重なり合った表皮細胞の増殖も促進され、皮膚が再生される。自家培養では なく、同種培養真皮という。アドバンスーティッシューサイェンス社(来)から発売され  ている。また、培養真皮の上に角質化細胞を重ね合わせて培養した培養皮膚は、オルガノジェネシス社から発売されている。

 

 培養表皮、培養真皮、培養皮膚は、重症熱傷、床ずれ、糖尿癇性潰瘍などの再生医療に効果を発揮している。緊急火傷の場合は、時間との勝負になる。現在では8割の皮膚が火傷を負っていても、再生医療によって修復延命できるという。