アラキドン酸の効用

 

 動物に実験的に恐怖感を与えると、脳内でアナンダマイドや、その前駆体のニアラキドニルグリセロール(2AG)が増えます。これによって恐怖感を和らげるのだと考えられます。

 

 アナンダマイドなどは、脳の感情の場で、恐怖を起こさせる扁桃核では多く作られますが、知的な活動をしている前頭前野などではあまり作られません。

 

 アラキドン酸はとくに脳、血液の細胞に多く含まれています(次べIジ図8-I)。脳ではDHAに次いで多く含まれます。

 

 子どもの脳の発達にも、アラキドン酸は欠かせません。ところが母乳にはアラキドン酸が含まれるのに、牛乳にはありません。

 

 では母乳で育てられた赤ちゃんと、牛乳だけで育てられた赤ちゃんで、何か違いが出るでしょうか。そこで、母乳で育てられた赤ちゃんと牛乳だけで育てられた赤ちゃん、さらにアラキドン酸を添加した牛乳で育てられた赤ちゃんで、小学生になったときの行動が調べられました。

 

 その結果、牛乳だけで育った子どもは、小学校に入ってからの行動が、母乳で育った子どもに比べて落ち着きのないことが多かったのです。アラキドン酸を添加した牛乳で育った子どもは、母乳で育った子どもと同じくらいに落ち着きがあることも確かめられました。

 

 六〇歳を過ぎると脳内のアラキドン酸が減ります(図8‘2)。アルツ(イマー病では、脳内のアラキドン酸量が減るので、脳の認知機能、記憶に関係すると考えられています。高齢者は刺激に対して反応がにぶくなるのですが、アラキドン酸を与えると反応時間が短くなります。

 

 こうしたことから、脳の発育や活動には、アラキドン酸が必須であることが分かります。

『脳の栄養失調』高田明和著より