EPA・DHA アラキドン酸

 

 脂肪は脂肪酸とグリセロールに分解されます。それが肝臓で再合成され、中性脂肪とリン脂質になります。中性脂肪はグリセロールの三つの腕に脂肪酸が結合した形、リン脂質はグリセロールにリン酸一つと脂肪酸二つが結合した形をしています。 中性脂肪もリン脂質も血流にのり、やがて脳に入ります。リン脂質はそのまま脳細胞膜に摂り込まれます。すると、そのリン脂質のグリセロールについていた脂肪酸がアラキドン酸と入れ替わり、ニアラキドニルグリセロール (2AG)ができます。その2AGからアナンダマイドがっくられるのです。

 

 このとき、血中にアラキドン酸が多ければ、それだけたくさんグリセロールと結合できます。しかしDHAやEPAが多いと、グリセロールにはこれらが結合してしまうため、アラキドン酸が結合できにくくなってしまいます。

 

 私たちは、心臓などが健康ならそれでよいというものではありません。脳の健全さも必要です。たしかにEPAをたくさん摂取するイヌイット心筋梗塞は少なく、その意味では健康です。しかし同時に、イヌイットにはうつ病になる人が多く、自殺率が非常に高いことも知られています。自殺の原因は一概にいえませんが、EPAを豊富に摂るために、アラキドン酸がグリセロールに結合しにくく、その結果、アナンダマイドが少なくなっていてうつ病になりやすい、とも考えられるのです。

 

 ではアラキドン酸を摂取すればするほどよいのかというと、もちろん、そんなことはありません。今度はEPAやDHAとの結びつきが弱まり、心筋梗塞のリスクが高くなります。

 

 これは、この本の令編を通じてのテーマですが、体に必要なものも、摂り込むほどに健康になるということではないのです。。ある程度の摂取”が必要なのだということを、よく理解ていただきたいと思います。

『脳の栄養失調』高田明和著より