アラキドン酸ダイエット

 

 さて、アラキドン酸の話にもどります。

 

 アナンダマイドの受容体にはCB1とCB2の二種類があります。CBIは中枢神経と末梢のすべての臓器、とくに肝臓、脂肪組織、腸管などに多くあります。一方CB2は免疫細胞、マクロファージなどにあります。

 

 遺伝子操作でCB1受容体をなくしたマウスは、恐怖心が強くなります。狭いところに入り込んで、広いところに出るのを恐れます。また痛みなどにも非常に敏感に反応します。そして、食べなくなり痩せるのです。

 

 アナンダマイドが快感、喜びをもたらすとするなら、このマウスは、食べることの喜びを感じないのかもしれません。逆に、食べることでアナンダマイドが豊富になり、喜びを感じてつい食べすぎて、肥満になる恐れもあるはずです。

 

 ダイエットは食べる喜びを我慢することですから、食べる喜びを感じさせない薬があれば、減 量には成功するでしょう。そこで、CB1を阻害するダイエット薬が間発され、ヨーロッパで大々的な試験をしました。

 

 すると、この薬を毎日二〇ミリグラム飲んだ人たちの半数ほどが、一年後に体重が平均五パーセント以上減りました。また善玉コレステロールといわれるHDL値(133べ上ン参照)は高くなり、中性脂肪は減りました。

 

 一方で、この実験に参加した人のおよそ六〇八-セントが、実験を中断しています。この人たちもある程度の減量には成功しているのですが、精神的に不安定になり、続行を拒否したのです。

『脳の栄養失調』高田明和著より