攻勢をかける100億ドル企業

 東京国際フォーフムでスイスに本社を置くノバルティスーファーマのトーマス・エベリング最高経営責任者(CEO)は、日本の製薬企業やバイオ関係者に向かってこう発言した。「ビジネスのパートナーとして、ぜひ我々を選んでいただきたい」。

 

 言葉は穏やかだが、これは合弁、合併・買収(M&A)、業務提携、資本参加を視野においたものだった。外資系製薬企業は、今、アメリカに次いで第二の市場である日本に攻勢をかけている。ファイザー製薬やグラクソースミスクラインなどの日本上陸組の老舗は、すでに日本国内での販売網を確立しているが、新規参入組は虎視眈々七日本の製薬企業と提携すべく物色に余念がない。トーマス・エベリング氏の意図は多くの外資系の考えを代弁したものだ。

 

 すでに銀行・証券・消費者金融などの金融、自動車、レジャー(ホテルやゴルフ場も含む)では、外資系が買収したか、あるいは資本提携が進んでおり、次のターゲットは製薬企業といわれている。

 

 これまで外資系が買収した日本の製薬企業は、エスエス製薬(独ベーリンガー・イングル(イム)、万有製薬(独メルク)、北陸製薬(独BASF↓来アボット)、そして最近になって中外製薬とロシュ (スイス)との合併劇があった。日本の製薬企業は、他の業種と同様着実に外資系製薬企業に狙われている。ただ日本の製薬企業の経営形態がどうなろうとも国民にとって良薬が提供されれば、それで良いということに変りはない。

 

 すでに日本の製薬企業は、世界の大手企業の後塵を拝している。グラクソとスミスクラインが合併した、ダラクソースミスクライン(萸)175億ドル、万有製薬を傘下にしているメルク(米)工74億ドル、ワ?ナ土フンバートと合併したファイザー(米)は148億5900万ドル、アストラゼネカ(英)148億340几カドル、プリストルーマイヤーズスクイブ(米)143億ドル、アベンティス(独/仏)126億8800万ドル、ジョッッッーエッドージョンソン(米)107億ドル、巾外製薬を傘下におさめたロシュ(スイス)106億2700万ドル、ノバルティス(英)100億5t上00万ドルといった売上高100億ドルを突破した、あるいは届きそうな外資系製薬企業が世界を席巻している。

 

 これに対して、武田薬品工業だけが、売上高9634億円(01年3月期)で100億ドルを超え、世界10位~15位に入っているに過ぎない。2位の三共は5450億円、3位の山之内製薬4579億円では、巨人と子どもの戦いである。