ブレーキ物質としてのドーパミン
ドーパミン神経の細胞体は黒質にもあります。黒質からの神経軸索は、大脳基底核に伸びています。パーキンソン病などでは、黒質が萎縮し、その結果、大脳基底核にドーパミンが出されなくなります。
パーキンソン病の人は運動に異常が見られ、ちょこちょこと歩いたり、顔の表情がなくなったりします。最後にはまるで体を動かすことができなくなったりもします。また、大脳基底核の先天的異常に舞踏病という病気があります。この患者はくねくねうねるように体を動かします。
こうしたことから、大脳基底核は運動の微調整を司る場所だと考えられてきました。
さらに最近、不安神経症や強迫神経症の人は、大脳基底核が過度に興奮することが多いことが分かってきました。大脳基底核にある尾状核は思考の変換器といわれます。ここに異常があると、同じ考えがつねに頭を支配して、その考えから抜けられなくなります。
一方、同じ大脳基底核の被殻は、行動の変換器といわれます。ここが障害されると、ある儀式をしないと眠れないとか、同じことを何度もしてしまう、などの行動の異常が見られます。
大脳基底核はアセチルコリンで興奮し、ドーパミンが抑制しています。
大脳基底核ではアセチルコリンが豊富で、常に興奮状態にあります。そこへ適度なドーパミンが届いて、ブレーキをかけているわけです。そのドーパミンが不十分なため、アセチルコリンが過剰になっておきるのがパーキンソン病などです。
『脳の栄養失調』高田明和著より