血栓症・塞栓症を招くから、放っておけないのだ。動脈硬化を速めるメカニズムは、血小板の凝集能が高まってヽ血液が流れにくくなることであることはすでに述べたがヽもしヽ血液が流れにくくなっていなければ、そう心配する必要はないはずだ。血圧の値と通過時間の値を併記すれば、目はどうしても血圧のほうにいってしまうが、重要なのは、通過時間のほうであることを忘れないでほしい。

 

   女性1と女性2は血圧も低いし、血液の流れもよく間題はない。高血圧の境界域に近い男性1も問題はない。それにくらべて、女性3と女性4は、降圧薬の服用で、血圧はそう高い値ではないが、肝心の動脈硬化を速める血液の流れにくさのほうは、改善されていないことがわかる。血圧が下がったからと安心してはいけないはずだ。女性3と女性4で特に気になったことは、通過時間が測定のたびに大きく変動したことだ。とてもきれいに流れてよかったと思ったら、次の測定では、トロトロ状態だった。これはなにを意味するのだろうか。降圧薬が血液の流動性にも影響しているのかもしれない。あるいは、血液の流動性が改善されつつあるのだが、まだ不十分なのかもしれない。

 高血圧が血小板の凝集能を高める理由を復習すると、血圧を上げて血液を無理に流す結果、血管壁と血小板が相互にすれる。そのときの力で血小板は活性化されて凝集能を高める。しかし、すれる力がどれほど増加するかは、動脈の内腔がどれだけ狭くなっているかによって変わってくる。また、血小板が実際に活性化されるかどうかは、血小板の凝集に対するアクセル系を強める食事をしているか、ブレーキ系の食事かによっても違ってくる。さらに、血中のカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)のレベルなどによっても大きく変わってくる。

 

 血液の通過時間が大きく変動する人は、それらの因子が安定していないのだと推測される。毛細血管モデルの通過時間をできるだけ頻繁に測定して、体の中の状況を推定することが重要だ。通過時間がいつも六〇秒をこすような人は、血圧が高くなくても、高ければなおのこと、動脈硬化のリスク、すなわち血栓症のリスクが高いはずだ。