遺伝子診断は血液などを採取し、遺伝子に異常があるかないかを調べ、病気との因果関係を特定していく。それによって病気やその種類が分かれば、治療方針も立てやすい。たとえば、慢性骨髄性白血病は、はとんどの患者で22番染色体の一部が短くなっている。人間の遺伝子ではない遺伝子が発見されれば、感染症を疑うことになる。結核菌は、従来の検査方法では1ヶ月以上かかっていたが、遺伝子診断では1週間から数日で分かる。

 

 束京千代出区の「九段クリニック」(阿部博幸理事長)では「遺伝子ドック」を開設している。診断のつく病名は、骨粗転症、アルツハイマー病、肥満、心肥大、虚血性心疾患、動脈硬化、高血圧、子宮ガン、飲酒による食道ガン・咽頭ガン、喫煙による肺ガン。遺伝子を採取するには、「頬の粘膜を2本の綿棒でこすり、細胞を採取する」「血液を採取する」だけだという。ただ子宮ガン検査は「子宮頚部から直接細胞を採取する」という方法がとられる。

 

 遺伝子診断を受診する人は、必ずカウンセリングを受けなければならず、また自らの意志で受診することが前提となっている。これは遺伝子診断が、将来のかかりやすい病気をも判明させてしまうからである。遺伝子診断によって重大な病気が明らかになった場合、心のケアをどうするかにもつながってくる。診断結果を前向きに捉えて、発症前にライフスタイルを変えて予防に努めればよいが、逆に落ち込んで仕事が手に付かなくなる人も出てくる。

 

 つまり遺伝子診断は両刃の剣となりうる。さらに困難な問題は、出生前診断受精卵診断では、羊水検査などの方法により、胎児の遺伝的形質が明らかになる。もし胎児に何らかの障害があれば、どうするのか、という重い課題が残る。