うつで生理が乱れるわけ

 

 もう一つ大事な点があります。それは性ホルモンが精神に与える影響です。

 

 女性の気分が女性ホルモンの影響を受けていることは知られています。女性がうつ病になりや  すいのは、月経前のエストロゲンの少ない時期、出産後に胎盤が失われ、胎盤からの大量のエストロゲンが得られなくなったとき、ということが知られています。

 

 うつ状態とはセロトニンが減った状態です。セロトニンが減るとエストロゲンも減ります。つまり、気分的に落ち込むと、生理が乱れたり止まったりするのです。

 

 これも、できるだけよい子孫だけを残す仕組みの一つと考えられます。

 

 子育ての最中に母親がうつになると、子どももうつになることが多いことが知られてい

ます。

 

 うつ病になると、右の前頭前野の活動が高まり、悲観的になります。うっが治ると、今度は左の前頭前野の働きが高まります。こうした状況変化は脳波で調べることができます。これによって、母親がうつ状態になると、その母親に育てられている子どもの脳も、同じように反応してくるのが多いことが分かります。

 

 うつは脳細胞の発達を障害し、細胞数を減らします。そのような脳をもつ人は、生存にとって不利なので、子孫を残すことが少なくなります。そこで、うつ状態のときにはなるべく子どもを生まない仕組みができ上がった、と考えられるのです。うつになると、男も女も性に興味がなくなるというのも、この仕組みの現れでしょう。

『脳の栄養失調』高田明和著より