何が血液の流れをよくしたのか?

 

 実は、ニンニクのにおいの成分アリシンが血小板の凝集能をおさえたのだ。アリシンが変化してできる成分の中にMATS(メチルアリルトリスルフィド)という物資があるが、それが血小板の凝集能をおさえる成分だとわかった。そしてそれは、血栓症を予防するために使われるアスピリンに匹敵する作用であることもわかった。アスピリンは、解熱剤としても使われる。副作用も指摘される、かなり強い薬だ。血栓予防のために常用すると、胃潰瘍になる可能性もあるという。薬と食品は基本的に違うが、ニンニクを効果的に食事にとり入れて、血栓を防ぐこともできる。

 

 また、ニンニクは脂肪の代謝も促進する。ニンニクを食べると交感神経が刺激されて、アドレナリンやノルアドレナリンが分泌される。それらの作用で脂肪分解が促進され、エネルギー消費が増える。最近、トウガラシダイエットが若い人のあいだではやっているが、ニンニクがトウガラシのカプサイシンと同じ働きをしているのだ。アドレナリンすノルアドレナリンが、血小板の凝集を強めることは前に述べた。アリシンとは反対の作用だ。このあたりが、食品の作用の複雑なところだ。

 

 「体がだるくなる」「疲れが抜けない」というのは、エネルギー不量だけでなく、体にたまった老廃物がうまく除去されない場合におきる。エネルギーの供給と老廃物の除去を高めるためには、血液の循環をよくすることが大切だが、もう一つ、代謝に深くかかわっているのがビタミンB群だ。中でもビタミン柮は脱炭酸酵素の補助因子で、糖質の代謝に欠かせない。アルコールや糖分の多い清涼飲料水、穀類を多くとる人は、ことに必要だ。

 

 このビタミン剔の吸収を高めるのが、ニンニクのアリシンだ。それだけでなく、アリシンとビタミン剔が結びつくと、アリチアミンという物質ができる。ビタミン剔は体内でつくられないばかりか、余分にとるとすぐに排出されてしまうが、アリチアミンに形を変えれば、脂溶性になって吸収されやすくなり、また、血液中に長くとどまってビタミン巳をゆっくりと離していく。ビタミン剔を長い時間利用し、代謝を促進することができるというわけだ。疲労回復にニンニクの効果を期待したいのなら、豚肉などに含まれるビタミン剔と一緒に食べるとよいだろう。

 

 血液がサラサラになる効果があるばかりか、さまざまな効用が期待されるニンニク。では、その食べ方は? まず、気になるのがにおい。最近、無臭ニンニクや乾燥ニンニクなどがスーパーなどに出回っているが、ニンニク臭がなくても効果は同じなのか一。はっきりいって、効果は薄い。アリシンが特別に処理されているので、においはない分、効果も減る。どうしてもにおいが気になる人は、牛乳やチーズ、パセリやセロリなどの消臭効果のある食べ物と一緒にとるといいだろう。もっとも、気にせずに「みんなでニンニク」料理を楽しむことができれば、いちばんいいのかもしれないが……。

 

 もう一つの間題、は食べる量だ。ニンニクは血小板凝集の働きをおさえはするが、食べすぎると止血作用が低下することも考えられる。また、生のニンニクを食べると、胃の粘膜をあらして胃潰瘍になることもある。一日に生のニンニクで一かけ、熱したものなら三かけぐらいまでが適量だろう。

菊池佑二著「血液をサラサラにする生活術」より