自分の単語帳を作るのがもっとも効果的

 

 単語を覚えなければ、というと真っ先に出てくるのが単語帳であろう。我々の時代はまだ通称「でる単」(『試験に出る英単語』森一郎著、青春出版社)が登場する前で、「赤尾の豆単」(『英語基本単語集』赤尾好夫著、旺文社)の全盛期であった。ご多分に漏れず、私も「赤尾の豆単」にトライした。しかしながら、持続する能力の乏しい私は完全に失敗した。べ九ンを汚したのはせいぜい最初の三〇ページほどであったろうか。あとは真っ白のまま終かったのである。単語集をひたすら覚えるというのは、持続力さえあるなら無意味なことではないと思う。現に私もabate(減じる)やabide(とどまる、続く)といった、・始まる単語を覚えていて重宝した覚えがある。

 

 しかし、相当な、というより特別な持続力がないと単語集を覚えていくという方法は本当の意味での効果をあげることは難しいと思われる。何と言っても意味のある文章とは無関係に単語だけを覚えるのだから、基本的に無理があるのだ。また、せっかく覚えた単語に実際に文章で出合わないということになりがちなのが、この方法の欠点てある。

 

 やはり文章のなかで出合いながら、わからない単語を理解し、覚えていくというのが自然

であり、効率的でもあるだろう。私は一時期、定期購読していた時に、わから

ない単語をノートにとっていたことがある。例によってそれほど長続きしたわけではなかったが、こうして作った単語帳は確かに役に立った。単語だけを見てももとの文章を思い出せないことも多かったが、その時にもう一度もとの文章を確認すると、かなり覚えられるようになった。

 

 最近、『私の英単語帳を公間します! 尾崎式の秘密』(尾崎哲夫著、幻冬舎)の人気が高いようである。テーマ別、話題別に関連する単語をまとめた単語帳である。同義、反語、語源などとも関連づけてまとめていて、覚えやすいし、興味をそそられる。しかし、こうしたものをただ読んでも、やはり単語集を読むのと似たような結果になりがちであると思う。自分がいろいろな文章を読む中で出合った未知の単語を記録し、「私の単語帳」を自分で作るのが一番であろう。その参考としてなら、こうした本は大いに役に立つのではないか。

文科省が英語を壊す』茂木弘道著より