ブドウ糖はクリーンエネルギー

 

 いったいなぜ脳はブドウ糖しか使えない、あるいは使わないのでしょうか。その理由は、ブドウ糖がクリーンなエネルギー源だということです。ブドウ糖を分解すると、水と二酸化炭素になるだけです。

 

 脳以外の臓器では、ブドウ糖やグリコーゲンがなくなれば、脂肪やアミノ酸をエネルギー源として使用します。ところが、これらは完令燃焼することができません。アミノ酸尿素などが残るし、脂肪からはケトン体などができます。これらの代謝産物は有害物質ですから、処理する仕組みを作らなくてはなりません。

 

 情報器官としての脳は、これを不必要な投資と判断し、ブドウ糖の供給を血液から受けることにしたのです。これは見方によっては危険な賭ですが、それによって情報器官として大きな進化を可能にした、ともいえます。

『脳の栄養失調』:高田明和著より

 

 

脳血管の独特な構造

 

 そのブドウ糖も、活動状況に応じて、必要卜分かつ最小限しか摂り込まないのが理想です。余分に摂り込めば、余りのものを棄てるか貯蔵するシステムが必要になります。そこで脳は、活動状況に合わせて、過不足なくブドウ糖を摂り込む仕組みを作り上げました。

 

 では、どうすれば、脳の活動状況を脳の血管の内皮細胞に伝え、必要な分だけのブドウ糖

が摂り込まれるようにすることができるのでしょうか。

 

 それをお話しする前に、脳血管の様子を見ておきましょう。

 

 普通の毛細血管は、血管腔を一層の内皮細胞が取り囲んでいるだけです。血中の物質は、この細胞または細胞問の隙間を通るか、あるいは細胞にある輸送体によって、組織細胞内、さらにそこを通って周辺の細胞へと送られます

『脳の栄養失調』:高田明和著より