亜鉛と脳の老化

 

 亜鉛はDNAの合成などに必要ですから、その欠乏は味細胞以外にも、いろいろな生体機能を障害します。とくに免疫機能に大きな影響が出ます。

 

 まず、亜鉛は胸腺を活性化しています。胸腺は免疫に重要な白血球のT細胞を送り出す場所ですから、ここが弱くなるのは大問題です。さらに亜鉛は、ウイルスへの抵抗を高めるアインターフェロンの産生を高めることも知られています。

 

 もっと重要なことは亜鉛の抗酸化作用です。亜鉛が少ない餌を食べさせた動物では、亜鉛を十分に含む餠の動物に比べ、フリーラジカルの量が二五~二〇パーセント増えることが知られています。フリーラジカルは反応性の高い原子で、老化の原因の一つとされています。

 

 フリーラジカルは脳細胞も損傷しますから、亜鉛の欠乏が脳の老化を促進することも考えられます。実際にアメリカでは、認知症の人の六〇パーセントに亜鉛が欠乏しているという報告があります。認知症の予防のためにも亜鉛が欠かせないのです。

『脳の栄養失調』高田明和著より