漢方薬からの発見

 

 中国東北部、モンゴルの原野、砂地などには、小低木のマオウ(麻黄一写真12-2)が分布しています。茎が生薬の麻黄です。咳止め、抗アレルギー、抗炎症、発汗、解熱、

鎮痛などの作用があり、風邪の初期によく使われる葛根湯にも配合されています。

 麻黄の薬効については、四〇〇〇年ほど前に著された医書『黄帝内経』にも書かれています。また、二万五〇〇〇年前のネアンデルタール人の墓にも、その実が多く残されていたことから、彼らもマオウを使ったのではないかといわれています。

 

 マオウの薬効成分を抽出し、その構造を決定したのは、日本の薬学の開祖といわれる長井長義博士です。彼は麻黄の薬効成分の抽出・濃縮を繰り返し、ついにこれを突き止め、エフェドリンと名付けました。エフェドリンは、喘息の症状を和らげる薬として大人気になりました。

 

 ところが、アメリカではマオウが入手しにくかったので、同様の作用がある物質を合成しました。それがアンフェタミンです。

 

 アンフェタミンは気管支筋を弛緩させる作用があり、喘息の吸入薬として発売されました。百日咳にも効果があります。アドレナリンに似た交感神経興奮作用によって、発汗や血圧上昇などを促すため解熱効果、抗炎症作用も認められています。

 

 一九三〇年代には、アスピリンと並んで、処方箋なしで購入できる薬でした。

『脳の栄養失調』高田明和著より