覚醒剤アンフェタミン
ところが、アンフェタミンを使っている人たちの中に、非常に活気が出て、疲れを感じなくなる、あまり眠らなくとも仕事ができる、などという人が多く出てきました。実際、第二次世界大戦では、夜戦のパイロットが眠気ざましに服用していました。
そこで、ボランティアの大学生にアンフェタミンを与えて、その効果を調べたところ、眠気をなくし、しかも疲労を回復させるということも分かりました。これが噂になり、多くの学生が試験勉強の際にこれを飲んだということです。
眠らなくてもよいという効果に目をつけ、昼間でも突然睡魔に襲われる病気(ナルコレプシ1)に使ったところ、著効を上げました。ところが、これを用いた患者の中に、統合失調症に似た症状を呈する人たちが出てきたのです。
アンフェタミンが、コカインと同じようにドーパミンを出させる、ということも分かりました。
こうして、統合失調症はドーパミンが過剰のために起こるという説が出され、これに基づいてドーパミンと受容体の結合を阻害する統合失調症の治療薬ができました。
アンフェタミンの治療効果はあったのですが、使い続けると耐性ができ、用量を増す必要がありました。また、薬をやめると禁断症状として強いうつ状態などが見られ、これを避けるためにますます用量を増やす、という悪循環に悩まされるようになりました。
このため現在では、これらの薬の使用は厳しく制限されています。
『脳の栄養失調』高田明和著より