尿の稀釈と濃縮

 

 尿量とともに、尿の濃さも環境によって大きく変化します。もっとも薄められた状態の尿の濃さを一とすると、この四〇倍まで濃縮することができます。このような幅広い調節力により、細胞外にある体液(細胞外液)の濃度は五%以内という狭い範囲に保たれています。

 

 たとえば大量に水を飲んでも、尿量が増え、尿が薄められることで血液の浸透圧はほとんど変わりません。宴会で浴びるようにビールを飲んでも平気でいられるのは、腎臓の稀釈力によるものです。

 

 反対に、暑い砂漠を歩いたり炎天下で長時間作業すると、尿は極限まで濃縮され、身体から水が失われて細胞外液が濃縮されるのを防ぎます。

 

 砂漠で道に迷った人が、のどの渇きがあまり強いので自分の尿を飲んだという話があります。このとき飲んだ尿は極度に濃縮されていて含まれていた水分は細胞外液を薄める役には立ちません。それどころか、せっかく最大限に濃縮して排泄した老廃物をまた飲んでしまうのですから、やがて前にも増した猛烈な渇きに苦しむことになります。