2014-10-24から1日間の記事一覧

 食事療法

私が腎不全保存療法を始めた一九八七年当時は低蛋白食がきわめて重視され、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)が発売されたばかりで腎保護薬としての効果はあまり認識されていませんでした。またもう一つの腎保護薬のアンジオテンシン受容体拮抗薬…

 腹膜透析

腹膜透析では、まず腹腔内にカテーテルを留置し、このカテーテルから透析液をニリットル注入して、六時間そのままに置いてから排液し、再び透析液を注入する操作をくり返します。 カテーテル留置は子術室で局所麻酔下に行ないます。このとき入院するのが普通…

 血液透析

血液透析は四時間ずつ週に二回行ないます。これによりクレアチニンクリアランスでいうと六%程度の腎機能を保つことができます。 毎分二〇〇ミリリットルの量の血液を透析器に導く必要があるので、前腕の動脈と静脈の側面に孔をあけ、二つの孔を縫いあわせ動…

 腎不全保存療法を普及させるには

ところで、このような患者さんに歓迎される治療法が広がっていかない理由は何でしょうか。一回当たりの診察時間、一回当たりの医療費を求めてみると、ほかの高血圧、糖尿病、慢性肝炎などの内科診療の場合とそう違いませんでした。しかしこの結果は、診察ブ…

 蓄尿が普及しない理由

ところが、この自宅で行なう蓄尿は、日本ではほとんど普及していません。 その理由は、患者さんにとっても医師にとっても蓄尿がわずらわしいことだからです。患者さんに蓄尿の利点を説明すれば喜んでやってくれるでしょうが、医師は蛋白摂取量などを求めるた…

二四時間蓄尿の意義

自宅での二四時間蓄尿を行なうと、クレアチニンクリアランス、蛋白摂取量、食塩摂取量、リン排泄量について知ることができます。適当な間隔で蓄尿によるモニタリングを行ないながら食事療法を指導することで、うまくいけば三回目の診察日にはほぼ正しい食事…

病気は糸球体から

腎臓の病気の多くは糸球体から始まると考えられています。たとえばlgA腎症、膜性腎症など、糸球体に生じた組織変化で病名がつけられているものが多いのです。 しかし病気が進行すると問質の変化も大きくなっていき、さらに進行すると糸球体に起こった元の…

体液量を保持するしくみ

レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系(RAA系)は、生物が陸生へと進化したときに備わった体液調節系です。陸上で生活すると、身体はただちに乾燥にさらされます。乾燥すると体液量は減り、やがて血圧も下がります。そこでこれを防止する尿細管の…

ホルモン分泌作用

ホルモンとは、「身体の器官や部分で作られ、血液によって他の器官や部分に運ばれる物 質」と定義されます。 エリスロポエチンは骨髄の赤血球産生にはたらく造血ホルモンです。血液の濃さがあるところまで下がると、尿細管のまわりの間質細胞で産生されます…

尿細管のはたらき               

糸球体で濾過された尿は九九%再吸収されますが、それはただ単に再吸収されるのではありません。身体に必要な糖やアミノ酸などは一〇〇%再吸収され、身休が必要としない尿素、クレアチニンなどはほとんど再吸収を受けずに排泄されます。 ただし再吸収の力に…

窒素化合物の排泄

二人栄養素である蛋白質・糖質・脂肪のうち、糖質と脂質は二酸化炭素と水に分解され、気体と水蒸気として肺から排泄できます。しかし蛋白質だけは窒素を含んでいるため気体として排泄できず、肺以外から排泄する必要があります。哺乳類は窒素を含んだ老廃物…

 尿の稀釈と濃縮

尿量とともに、尿の濃さも環境によって大きく変化します。もっとも薄められた状態の尿の濃さを一とすると、この四〇倍まで濃縮することができます。このような幅広い調節力により、細胞外にある体液(細胞外液)の濃度は五%以内という狭い範囲に保たれてい…