傷がつくと凝集する血小板

 

 

 血液の細胞成分の中で二番めに多いのが血小板。血小板は、赤血球が血管から漏れないように、血管の破損部位をふさぐ。赤血球よりもだいぶ小さく、二~三マイクロメートルの大きさの円盤型をしている。血管に傷がつくと、血小板はその瘍に粘着し、互いにくっつきあう。血小板には、粘着性・凝集性といわれる性質があるからだ。血小板がくっつきあったかたまりがしだいに大きくなることで、傷口からの出血をおさえている。

 

 正確にいうと、血小板は傷口からの刺激物質を感知すると、粘着性・凝集性がない状態から、粘着性・凝集性のある状態へと変化する。この変化がゆっくりしていると、すばやく傷口をふさぐことができない。また、傷口を通りすぎて別のところに粘着・凝集してしまう。そのため、この変化を著しく速めるようにアクセルが働く。けれども、アクセルが働きすぎると、血小板の粘着性・凝集性が高まりすぎて、傷口だけでなく、血管ごとふさいでしまうことになる。すなわち、血栓ができてしまう。そうならないために、今度は、ブレーキが働く。逆にブレーキがききすぎると、傷口をふさぐことができなくなって、出血が続いてしまう。このアクセルとブレーキのバランスがとれていることがとても重要だ。アクセルとブレーキのバランスがくずれると、事故がおきることは、自動車の場合とまったく同じだ。

 

 たとえば、動物性の肉や脂肪に多く含まれているアラキドン酸は、血小板の細胞膜にとり込まれ、さらにプロスタグランジンTXA2と呼ばれる物質となる。これが血小板に働きかけて凝集性を強く高める。すなわち、アクセル系に働く。同じアラキドン酸も血管内皮細胞の細胞膜にとり込まれると、プロスタグランジンPG12と呼ばれる物質になる。この物質は血小板に働きかけ、凝集性を強くおさえる。すなわち、ブレーキ系に働く。しかし、高脂肪・高タンパク質の食事をとりすぎるとアクセル系にバランスが傾くといわれる。

 

 凝集性が高まると血小板が相互に凝集して、血液が流れにくくなる。そのため、血液を流そうと、血圧が上がる。通常なら流れにくいところを無理に流すので、血管壁がすれて瘍ができやすくなる。それだけでなく、血小板自身もすれることになる。専門用語では、「強いズリ応力を受ける」という。そうすると血小板の凝集性が高まる。このように血小板の凝集性が高まれば、血液はさらに流れにくくなる。アラキドン酸のとりすぎは、この悪循環を引きおこす可能性も考えられる。