冷え性は血流の悪さから

 

 冷房が普及した現在、夏でも冷えに悩まされる女性たちは多い。冷え性は、女性の月経痛や膀胱炎、頭痛、関節炎、疲労などを引きおこすとも考えられている。最近では、女性ばかりか男性の冷え性も増えているという。この冷え性も、末梢の血流の悪さを示すものにほかならない。

 

 まだ、早春という肌寒いころ、十代の女性二人が研究室にやってきた。ミニスカートにジャケツト、上着を脱ぐと、下に着ていたのはノースリーブのセーターだった。寒そうだが、本人たちはいたって平気といった感じだ。夏はタンクトップがキすミソール、下半身は靴下をはかない「生量(なまあし)」状態だそうだ。冷暖房の完備された部屋では、一年中、薄着でとおしているという。そんな彼女たちの血液はというと……。

 

 一人は血液がトロトロ状態で、計測の途中で流路をふさいでしまった。もう一人は、最初はサ

ラサラと流れていたが、途中がら血小板がくっつき出して、流れは滞ってしまった。どちらも、

女性の平均通過時間、四五秒を大幅にy」えていた。初めて見る自分の血液の状態に、彼女たちはビックリ?・ でも、本人たちには、自分が冷え性という意識はほとんどなかった。

 

 しかし話を間いていくと、手量が冷たい、疲れやすい、生理不順、肩が凝る、そういえば立ちくらみもあるかな……と、さまざまな症状があることがわかった。彼女たちの訴えるそれらの症状を冷え性というのだが、本人たちにその意識はない。

 

 彼女たちの血液は、トロトロ状態だった。血小板の凝集、白血球の粘着、これでは血行はとてもいいとはいえない。血液がトロトロで循環が悪いと、新陳代謝が低下する。そのため、エネルギーの産生が十分に行われず、寒がりでがぜをひきやすい、疲れやすいなどの症状が出る。

 一九九七年、北里大学の北里研究所東洋医学総含研究所に「冷え症外来」ができた。そこでは、冷え性の人とそうでない人の血液の流れを比較している。それによると、冷え性の人は安静時の量の中指の体表温度が、そうでない人より約四度低く、血液の流れが約半分との結果が出ているという。冷え性と血流の悪さが関係しているデータだろう。

 

 ただ、本当に末梢の循環が悪いのか、単に皮膚の丞面温度が低いことを「冷え性」と勘違いしているのか、よくわからないことがある。皮膚の血流はラジエータと同じだ。皮膚の血流がよく調節されていると、皮膚の温度は相対的に低くなる。うまく調節されていないと、放熱しっぱなしで、皮膚温度が相対的に高くなることが十分に考えられる。私たちのデータでは、血液の流れの悪い人は男性に多く、女性に少ない。それに対して、女性で冷え性を訴える人が多い。皮膚の循環を調節する機構の働きは、その部分の血流に依存している。このあたりの事情が、一見矛盾する結果を説明してくれるのではないがと考えている。本当に末梢循環が悪いと「しもやけ」になるはずだが、「しもやけ」になったという話はあまり聞かない。

菊池佑二著「血液をサラサラにする生活術」より