女性のほうが長生きの本当の理由

 

 日本の女性の平均寿命は、約八十四歳。男性の平均寿命は、約七十七歳。これだけ医学・医療が進歩しているのに、男女間の平均寿命は開きこそすれ、縮まることはない。

 

 女性が長生きする理由として、「女性ホルモンのせい」との説明が一般的だ。また、「女性ホルモンのおかげで動脈硬化の進行が遅い」「女性ホルモンがあるから活性酸素に対する防御能力が高い」ともいかれるが、しかしこれは、女性が長生きであることを科学的にいい換えているにすぎない。複雑な間題だからしかたないとしても、医学では、このようないい換えにすぎない説明が実に多いのだ。

 

 私は、女性が長寿の理由を、女性の血液が男性の血液にくらべて流れすすいためだと考えている。五キログラムのバーベルを一〇〇回持ち上げることのできる人は、四・五キログラムのバーベルだったら、一一〇回上げることができる、ということはたやすく理解できる。心臓も、流れにくくて重たい血液を押し出すより、流れやすくて軽い血液を押し出すほうがらくであり、それだけ多数回、拍動できるわけだ。

 

 名著『ゾウの時間 ネズミの時間』(本川達雄著/中央公論新社刊)で著者は、どんな動物でも心臓が一生のあいだに拍動する(できる)回数は同じだといっている。これは「血液の流れやすさが同じであれば拍動回数は同じ」との条件つきで理解すべきで、流れやすい血液であれば、それだけ多くの回数、心臓は血液を拍出できるといえる。

 

 女性の血液リリットルが毛細血管モデルを流れる時間、約四五秒と、男性の約五〇秒では、五秒の差がある。五秒は、流れる時間全体の一割をこえる差だ。この差が、平均寿命の約一割の差になっていると考えれば、これほど理解しやすいことはない。