バイオインフォマティクス分野

 

 バイオインフォフアイクス(生物情報科学)は比較的新しい分野である。バイオテクノロジーの発展は、バイオインフォマティクスなくしては考えられなかった。遺伝子工学といった場合の「工学」を支えている産業である。いささか抽象的になるが、機械工学、電子工学、情報工学が合体してできたのが、バイオインフォ了アイクスである。そもそもバイオインフォマクティクスは、機械として生物を考え、情報分析から生物を考えるという視点から思考している。

 

 この分野の主役はコンピュータの解析部門であるが、これなくしては遺伝子解析も、バイオエ学も発展しなかった。この業界は遺伝子解析が中心であるが、たんぱく質を中心に解明が早まれば、米国を抜くことも考えられる。具体的には、たんぱく質コード領域(0RF)の予測、他の類似したたんぱく質や特徴的な配列の検索、たんぱく質の立体構造予測、遺伝子発現情報の解析などから遺伝子の機能を明らかにして、発生・分化や代謝機能を解明することにある。

 

 最近では、薬の候補物質をスクリーニングして得られた物質の薬理や毒性をはじめ、前臨床試験臨床試験までのデータを統合化する役割も担っている。

 

 日立製作所は、1999年10月、ライフサイエンス推進事業本部を発足させた。同本部は、DNAや遺伝子・たんぱく機能解析など基礎研究を狙っていた中央研究所と、自動血液解析やDNAシーケンサー複数の処理を決められた順に従って行うハードとソフト)を手がけてきた計測器部門、そしてスーパーコンピュータや並列コンピュータによる遺伝子高速解析やデータペースの柵築に取り組んできた情報部門から人材と枝術を結集してスタートしている。

 

 中核となる事業は、以下の通り。

 

  • DNA大規模受託解析サービス

 顧客から与えられたDNAサンプルを大規模なDNAシーケンスセンターで短期問に大

筮解析。

②特定遺伝子領域受託サービス

 特定生物の発現プロファイリング、あるいは疾患関連遺伝子領域の解析。DNA配列のジーゲンレンズから情報解析処理まで。

③遺伝子機能解析情報支援サービス

 臨床サンプルから得られた大量の発現プロファイルデータなどから遺伝子機能を解析するための高機能・高性能な情報処理環境を提供する。

④DNAデータベースサービス

 

 構造遺伝子周辺SNP情報を系統的に収集し、これに遺伝子機能情報、遺伝子構造情報、翻訳/転写領域情報、臨床情報、文献などを関係付け、疾患関連遺伝子特定に有効なデータベースを提供する。

 

 また同社では2000年5月にマイリアド(米)と提携し、製薬企業を顧客としたプロテオミクス(たんぱく質機能解析)にも乗り出している。

 

 オリンパスエ業は99年12月に「高感度DNA光検査システム」を発表している。これは新子不ルギー産業技術総合開発機構(NEDO)から問発委託を受けて完成したものである。血清サンプルから目的とするDNAを分離・抽出するフリーフロー電気泳動モジーユル、DNAを高速・高精度に増幅するPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)モジュール、DNAチップのノンラベル光検出を実現する折り返し光路型比較エリプソメータ、それぞれの全自動化を成し遂げた。

 

 感染症の診断は人手や試薬を多く費やし、結果が得られるまでに長時間を要する。光検査システムは、これらの課題を解決し、迅速・安全・低コストなものにした。また。2000年4月には「DNAキャピラリーアレイ」という半導体の微細加工技術を応用した遺伝子情報解析システムを発表している。

 

 ヒトゲノム解析で気を吐いているセレラジェノミクス社は、実は高速DNAシーケンサー「ABI PRISM 3700 DNA Analyzer」があったからこそ、解析を強引に進められた。これを上回る装置が理化学研究所島津製作所によって開発された「RISA1384」というDNAシーケンサーである。このシーケンサーは、セレラ社の4倍の速度を持ち、理化学研究所ではすでに30台が稼働している。

 

 また同社は、ポストゲノムの有力候補「たんぱく質」をターゲットにした解析装置も開発中である。たんぱく質こそ生体活動の主体であり、生命現象の基点であることが判明している。一度に数百個のたんぱく質を自動的に同定する「プロテオーム解析装置」がそれにあたる。プロテオームとは、ゲノムに対するたんぱく質のセットという意味。従来のプロテオーム解析は、二次元電気泳動によって分離したたんぱく群を、レーザーイオン型質量分析計で同定していた。この方法は人手時間がかかり、高速化ができなかった。これを自動化するという研究で同社が一歩進んでいる。