教室向きでない英会話

 

 

 テニスが教室で上達しようがないのと似て、英会話を教室で上達させようというのは場違いなのである。AET(Assistant English Teacher)のネイティブが教室に来たとしよう。会話はスポーツなのだから、実際に声に出してしゃべらなければうまくならないことはすでに説明した。ネイティブと生徒が直接会話をできる時間は、一分×四〇人=四〇分、これではぼ一時限が終わってしまう。人数が多いのがいけないのだ、ということで、二〇人クラスにしても状況は少しも変わらない。一人二分(×二〇人=四〇分)となるだけのことである。JETプログラムによってブネイティブを海外から人量に呼び、全国の学校に派遣したにもかかわらず、まったく会話力が向上していないという実態の根本原因は実はここにある。ネイティブの質とか熱心さとかは関係ない。原理的に言って当然のことなのである。発音、朗読といった基礎訓練をもっと重視し、ネイティブにこれを集中的に担当させるということが可能なら、もう少しは効果が上がるかもしれない。しかし、ネイティブは常時教室に来るわけではないので、こういう、どちらかと言うと毎日行うタイプの基礎訓練を担当するのには向かないであろう。こう考えると、AETの効果的な活用ということは予想外に難しいことなのである。今後のあり方について、空論ではなく、実態に基づいた徹底的な検討が必要である。さもないとまったくの国費と時間の無駄遣いとなってしまう。

 

文科省が英語を壊す』茂木弘道著より