会話トレーニング部は英語版「そろばん塾」

 

筆者の体験で言うと、ダントツの効果をあげる教育として「そろばん塾」がある。学校では、せいぜい二桁の足し算をゆっくり行うくらいなのに対し、そろばん塾でのトレーニングを一年も行うと、五桁くらいの加減算ならものすごいスピードでできるようになる。さらにかけ算・割り算までできるようになる。それどころではない。読み上げ暗算なるものを練習していくと、やがて二桁三桁、さらにはそれ以上の暗算もできるようになるのである。まるで魔法ではないかと、私はかつて驚嘆したことがある。これは読み上げ暗算を繰り返し練習することで、言ってみれば頭の中に「そろばん脳」が形成され、そこでアナログ的にそろばんをやることができるようになるためである。英語会話の場合の「英語回路」「英語脳」に相当すると言えるかもしれない。

 

 夜一時間はとなり組むだけなのに、そんなことができるようになるのである。学校の一〇〇倍、というより一〇〇〇倍の力を現実につけてくれるのだ。考えてみると、そろばん塾は指先を使うスポーツ・トレーニングだったのだ。英会話は、口を使うスポーツ・トレーニングと考えればよい。そしてスポーツ的トレーニングによって、「そろばん回路」「英語回路」

が脳内にできていくのである。

 

 そろばん塾の思い出で、印象に強く残っていることがある。それは学校での成績がここではあまり関係がないこと、また、落ちこぼれというものがほとんどないことである。

 

 必修語数一〇〇語に象徴されるように、負担を減らすことで落ちこぼれをなくそうというのが「ゆとり教育」の根本思想である。これは人間というものがまったくわかっていない実に幼稚な考え方である。子どもは、一〇〇語に負担が減らされてもちっとも喜ばない。基礎練習に繰り返し取り組んだ結果として、「できた」という達成感を感ずることこそが子どもにとって何よりの喜びなのである。主体性などというものはそこから生まれてくるものだ。それはどの子にもできることなのである。「ゆとり教育」などという「迷信」でまともな人間が育つこともないし、英語ができるようになることもない。

 

文科省が英語を壊す』茂木弘道著より