喫煙が血流を悪くする

 

 喫煙が体に悪いことは周知のことだが、愛煙家の中には、なかなかやめられない人もいることだろう。また、たばこは吸っている本人に害があるばかりではなく、その煙を吸う人たちにも害を与える。そこで、たばこを吸うと血液の流れがどのようになるがをみてみよう。

 

 ます、成人男性三八五人にたばこを吸うかどうかを間いたところ、吸う人が一三四人、吸わない人が二五一人だった。三人に一人がたばこを吸う割含だ。

 

 そこで、血流を調べたところ、吸わない人の通過時間は平均四八・六秒、吸う人は平均五四・一秒との結果が出た。吸う人のほうが血液の流れが、やはり悪かった。およそ六秒の差だ。この六秒の違いは、あとで述べるように寿命に換算すると、およそ八年の差になる。ただし、現在の健康状態が続いてのことだが……。喫煙する人が、脂肪たっぷりの食事にアルコールも飲み、運動不量ときたら、これはもう動脈硬化まっしぐらのはず。八年の差はさらに広がる。

 

 たばこが体に悪いことはわかっている。が、ストレスのかかる現代人の生活では、たばことストレスは切っても切れない関係だ。たばこをやめて、ストレスが高まらないかと心配な人もいるだろう。

 

 たばこを吸うと、それに含まれる二コチンが、副腎髄質から出るアドレナリンの分泌を増加させるといわれている。それが高血圧を、さらに、動脈硬化を進める。一方で、人間は肉体的にも精神的にも、追いつめられると交感神経系が働き、心身をともに守るうとする。そのため、繰り返しになるが、副腎髄質からはアドレナリンが分泌される。すなわち、たばこを吸ったときと、ストレスを受けたときとは、同じことになるのだ。アドレナリンが血小板の凝集能を高め、白血球の粘着能を高める。

 

 たばこを吸うと、その分、酸素輸送量が低下する。それを感知して、腎臓でエリスロポエチンという物質がつくられる。エリスロポエ子ンが赤血球をつくる骨髄に働きかけ、赤血球を増産させる。たばこを吸う人では、赤血球が増加しているyしとが多い。その分、血液が流れにくくなる。見た目に大きな変化はないが、いつもかかる負荷の増加はおるぞかにしてはいけない。

 

 私たちのデータでは、たばこを吸っていても、血流が悪くない人が大勢いることもたしかだ。たばこを吸い、お酒を飲み、おいしいものを食べ、運動もしないで、血流はまったく正常という人もいる。一方、たばこは吸わない、お酒は飲まない、食事に気をつけ、運動もしている。それでいて、血流が悪い人も大勢いる。実際、神様の不公平と感じることも少なくない。

 

 これまでは、平均値で得られた結果に基づいて、誰に対しても一律に同じことをいわざるをえなかった。それだから、誰も、自分には当てはまらないと聞き流す結果になったのだ。毛細血管モデルで血液の流れやすさを測定してみせれば、一般論をいう必要がなくなる。

 

 さて、たばこを吸い、お酒を飲み、おいしいものを食べ、運動をしないで血流のいい人に対して、なんというべきだろう。一〇〇パーセントの自信はないが、私はそのままでいいのだと思っている・ただ、たばこだけはやめたほうがいいのではないだろう

 

  か。また、正直にそういえば、たばこはやめてくれるのではないだろうか。

 

   実際に、出血を含めて血栓症で倒れた例をみていけば、一つだけの要因がかかわっているような例は、ほとんどないはずである。仕事に追われる、締め切りに間に合わないなどの強いストレスから、徹夜や昼夜逆転の生活を余儀なくされ、外食ならまだしもインスタントもので食事をすませざるをえなくなる。運動をする余裕などまったくない。酒とたばこでストレスをまぎらわすことになる。そして、不眠症や胃腸障害など体が発する警告のサインに気づきながら大事にいたらないだろうと無視してしまう。その結果は、いわずもがなだろう。

   ストレスは、必す存在する。今述べたように、ストレスからはじまって多くの要因が同時に作用する。そして、過剰のストレスから生命は危険にさらされる。それに対して、脳から快楽物質といわれるβ-エンドルフィンが分泌されれば、ストレスの影響は緩和される。イライラしたり悩んでばかりでなく、快楽物質が出るような暮らし方を考えたいものだ。もっともそれができれば、はじめから間題はないのだろうが……。