麦茶  思いがけない血流改善効果

 

 夏にはのどの渇きをいやす麦茶。その歴史は古く、一〇世紀に編纂された『倭名類聚抄』に麦茶は登場している。また、江戸時代に編纂された書物『本朝食鑑』には、大麦の効用として、「胸を寛げ気分を穏やかにし、血を涼にし、つかえを消し、食を進める」との記載がある。これは血液が流れやすくなって、副交感神紅が優位になったときの感じ・調子であろう。そこで、麦茶が血液の流れに与える影響について調べてみた。

 

 三十代の男女一名ずつに、麦茶二五〇ミリリットルを飲んでもらい、その前後の血液の流れ方を調べた。

 

 男性 飲用前四八・八秒/飲用後四〇・〇秒

 

 女性 飲用前三九・六秒/飲用後三五・〇秒

 

 麦茶を飲用したあとのほうが、明らかに、血液の流れはよくなっている。血流をよくする成分が原料の大麦に含まれており、それはビールとも共通すると思われるが、プラス ″として、焙ることによってできる成分も関与している。その成分が麦茶に香ばしいにおいを与えるピラジンで、血小板の凝集をおさえていると考えられる。

 

 そのメカニズムは次のようだ。血小板細胞にカルシウムイオンが流れ込むことで、細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇し、それが引き金となって血小板凝集反応がおこる。そこで、ピープリンが細胞の外から血小板細胞にカルシウムイオンが入り込む通路をブロックする。そうすると、緇胞内のカルシウムイオン濃度の上昇をおさえ、血小板が凝集しにくくなる。その結果、血液の流れが改善されるのだ。

菊池佑二著「血液をサラサラにする生活術」より