イギリスでは金持ち中産階級が自費や民間保険で民間病院に行く傾向が強まっている


イギリスの医療制度は、税による公的医療制度(NHS)であり、第一次医療(プライマリーケア)分野を担当する一般医(GP)と第二次医療を担当する病院とに機能が区分されています。NHS制度の財政的見通しは、1980年代初頭から始まりました。サッチャー改革の中で、1989年から医療の内部市場化と呼ばれるものが進められましたが、保険者の下に8つの地方、さらにその下に約100の地方自治体がNHSの予算を管理します。
改革の基本方針は、医療サービス供給側と医療サービス購入者(地方自治体)側との契約というシステム化です。そのために、公的医療機関は地域におけるトラスト(受託団体)という独立法人となり、NHS制度化において独自に、財政、医療サービス、人事などの効率化、充実化を目指すことになりました(これがNHSトラスト病院と言われています)。トラストの業態種類には、病院トラスト、プライマリーケアトラスト(PCT)、救急トラスト、介護トラスト、精神医療トラストなどがあります。中でもファンデーショントラスト形式は、より自主性を持った地域住民参加型のトラストとして、拡大しつつあります。1994年以降、公的病菌はNHSトラスト病院に転換しました。現在約200のNHSトラスト病院があります。管理についてはマネジドケア型手法を多く取り入れており、予算んは年々増加しているにもかかわらず、伸び率の圧縮はしています。ただし、金持ち中産階級は自費や民間保険により民間病院へ行く傾向が強まっています。
またGPの制度については、28の地域保健局の下にNHSからの予算を管理する全国で約300のプライマリーケアトラストが編成され、現在予算の80%を管理していると言われます。
このトラストについては、民主的で非営利社会的企業として運営されるものが増えていることが非常に重要な点です。2003年からは、患者がカルテを閲覧できるようになり、一般医の選択の幅が広がり、また薬剤師の権限強化などが施策として実施されました。当初、イギリスでは民間資金投資方式PFI/PPPを導入して、公的病院の民営化を勧めようとしましたが、当初のもくろみである費用節約という実績の効果はあまり出ていないという評価に現在なっています。すなわち、営利企業の参入は、取引費用の増加をもたらすことになってしまったからだと言われています。
このために、ファンデーショントラスト病院方式が伸びてきています。自主性を高めるということは、自主財政を高め、また畝医管理に市場参加を重視していることに特徴があります。政府は、医療制度改革の目玉として、非営利・共同の医療機関の役割を重視する政策を出しています。例えば、2006年の保険証の白書によれば、こうした社会的企業が一般医療、介護などの分野で役割を高めるための社会的起業基金を設置して促進しています。