入院診療費が少ないことの最大の原因

 入院診療費が少ないことの最大の問題点は、病床数あたりの医療従事者の配置が少ないことである。医療従事者の配置は安全に直結する。『月刊保団連』臨時増刊号、七七〇号「医療保険と診療報酬」によると、わが国の入院病床一〇〇床あたりの医師数はアメリカの五分の一、ドイツの三分の二看護師の配置はアメリカの五分の一、ドイツの二分の一である。

 医療従事者の個人的な頑張りで病院診療が成立している。過酷な条件下で働く日本の医療従事者をヒラリー・クリントン氏は「聖職者さながらの自己犠牲」と表現して絶賛した。

 追い討ちをかけるように、在院日数の短縮化で急性期病院が全体としてICU(集中治療室)化している。ICUというのは重症で手間がかかる患者を治療する病棟で、通常の病棟より多数の看護師が配置されている。厚生労働省の誘導で入院期間が短縮され、病棟には手間のかかる患者が多くなった。看護師の配置は労働が過酷化しているにもかかわらず、それに見合った形では増やされていない。ICU化とはやるべき仕事がICUなみに多くなったにも関わらず、増員されていないことを意味する。こうした病棟では深夜勤務が危ない。看護師二名で三〇-五〇名を管理している。