参天製薬

参天製薬にとって最大の経営課題は、「世界の参天製薬」へ飛翔することです。そのための現実的な企業戦略があるかと問われれば解答は難しいでしょう。
参天製薬の参入する医療用点眼剤市場では、大手グローバル企業であるスイスのアルコン、米国のアラガンやファイザーが欧米で正面から競合しています。そのすき間に割って入るための条件は、自社開発品の品ぞろえと販売体制の構築です。
参天製薬は過去に一度米国での単独自社販売を試みましたが、大幅な赤字計上が続き2003年に自販撤退を発表し大規模な戦線縮小を迫られました。欧米での事業も限定的で北欧とドイツに拠点を持つにとどまっています。
そこで目指すのは新興国市場ということになります。医療用の点眼剤市場はハイエンドとローエンドの製品で二極化しています。新興国市場では合成抗菌剤などのローエンドの製品需要が伸びており、今後は緑内障やアレルギー疾患の点眼剤の需要拡大が見込まれます。
一方、日米欧では緑内障から角膜疾患、そして加齢臭黄斑変性症や糖尿病性網膜症などの治療薬に対するニーズが増大しています。
医療用の点眼剤に共通して言えることは、高齢化の進展で眼領域の疾患の治療薬の需要は確実に増加することです。
そして失明や視力の低下は、患者のQOLを極端に悪化させるだけでなく、家族や介護者の負担による社会的なコスト増にもつながります。例えば加齢性黄斑変性症の患者の失明リスクを完全に回避することは難しいですが、失明を遅らせたり、将来的には治療が可能となる新薬を開発することは大きな社会的貢献になります。
参天製薬はすでに中国市場へは直接投資を行い、2009年後半に本格的な現地生産を立ち上げる計画です。すでに現地では合成抗菌点眼剤を参天ブランドで自社販売していますが、中国では現地生産を義務付けられることもあり、参天製薬としては現地に根付くためにも重要な投資になるでしょう。またロシアや東欧などでもローエンド製品が中心ですが、市場進出の機会はあるでしょう。
研究開発面では、やはりハイエンドの製品開発力が鍵になります。元々点眼剤は全身薬として経口剤や注射剤として開発された成分を、液剤化し眼科向けに剤形変更することが主流でした。今後は遺伝子情報などを使って失明リスクを減らしたり、発症予防につながる研究開発も重要になって来るでしょう。
こうした体力勝負的な研究開発をこなしていくためには参天製薬だけでは力不足であり、グローバルな他者との提携を模索する必要があります。
欧米ではノバルティスファーマがアルコンを段階的に買収し、2011年までに発行済み株式数の約77%を取得します。株式取得に要する総額は390億ドル、約4兆円です。
アルコンの2007年度業績は、売上高56億ドル、営業利益19億ドル、当期純利益16億ドルで売上高は昨年度比13%増、営業利益は同じく22%増、当期純利益も28%増でした。
アルコンは眼内レンズや眼科向け手術器具なども手掛けていますが、ノバルティスファーマはアルコンを成長企業として買収することも明言しています。アルコンとノバルティスファーマはアルコンを成長企業として買収することを明言しています。アルコンとノバルティスファーマの日本国内眼科事業も大幅な拡充となります
ノバルティスファーマに限らず、外資系企業が参入製薬と国内で提携を求めるてくることには十分に考えられます。買収提案という可能性もあるでしょう
いずれにしても参天製薬は国内シェアトップであり、新薬開発パイプラインもそこそこ充実しており、買収ターゲットになりやすい企業ということになります。あくまでも仮定の話ですが、買収提案を受け入れるか、拒否するにしても十分な理論武装が必要です。