田中さんのノーベル賞と英語力

 

 田中耕一さんが、ノーベル賞受賞の記者会見で、"I don't want to speak English."と言ったことはよく知られている。そうは言っても田中さんは、ちゃんと英語でスピーチもプレゼンテーンョンもした。研究に必要な英語の文献を読む英語力は当然持っている。しかし、英語で話したくないと言ったのは本音であって、決して英語が得意なわけではないし、言ってみれば必要最低限の英語力ということなのかもしれない。とくに英会話はもっとも苦手とするところかもしれない。

 

 しかし、逆を考えてみたらどうだろうか? もし田中さんが小さい時から英語の勉強に力を入れ、英語をぺらぺらしゃべり、英語が大得意になっていたらどうなったかということである。言えることは、ノーベル賞受賞者になることは絶対になかったということである。当然である。時間が膨大にかかる英語の学習に「かまけて」いて、ノーベル賞級の学間・研究など行えるはずがないからである。英語自体がとびきりの価値があるのではなく、何かの能力と合体して初めてそれなりの価値を生かものである、という当たり前のことを理解させてくれる実例ではないだろうか。

文科省が英語を壊す:茂木弘道著より