いまを生き抜くための食事

 

 もちろん、感情を支配する脳内物質はセロトニンだけではありません。ノルアドレナリン、アドレナリン、ドーパミンなども重要です。実際に、ドーパミンノルアドレナリンの放出を促進する薬は、抗うつ薬として使われています。

 

 ですから、トリプトファンの摂取が少なく脳内のセロトニン量がじ分でなくとも、すぐにうつ状態になるとは限りません。

 

 さらに最近では、うつ病がおきるメカニズムをストレスで説明しようという考えが出ています。ストレスを受けると、視床下部からある種のホルモンが出され、それが最終的に副腎皮質からコルチゾルを分泌させます。同時に、辺縁系などにも作用してその機能を損なわせ、それがうつ病を生むということです。

 

 ストレスはいつの時代にもあったはずです。しかし、いまほど変化の激しい環境ではなかったと思われます。環境変化が少ない時代には、たとえセロトニン量が少なくても、うつ病にまでなることは、それだけ少なかったのでしょう。

 

 「むかしは菜食で生きられた。魚といっても煮干しのようなもので十分だった」という方もいますが、むかしといまとでは環境が根本的に異なります。現在のように激しい競争時代、将来が見通せない時代には、それらの不安定要因に抵抗できる心の強さが必要です。

 

 脳は神紅伝達物質を総動員して、ストレスや不安に抵抗しなくてはならないのです。脳を元気づけるセロトニンは欠かせません。その原料として、トリプトファンの摂取は必須です。つまり肉食が必要なのです。

『脳の栄養失調』高田明和著より