高血圧・動脈硬化を引きおこす

 

 現在、日本では約二〇〇〇万人以上が高血圧だといわれている。年齢が進むとともに、「血圧が高くなった」と感じている人も多いだろう。目立った症状がないのに高血圧だけで死亡することはないが、合併症が恐ろしく、油断できない病気だ。血圧は血液を循環させるためにはなくてはならないものだ。血液の三分の一を失うと死ぬのは、血圧が出なくなって循環が止まってしまうからだ。すぐ、輸血でなくても輸液を行えば、助けられる。血圧はなくてはならないので、体には多くの昇圧メカニズムが備かっている。だから、なにかあると血圧が上がりやすくなっているのだ。

 

 WHO(世界保健機関)によると、収縮期の血圧(または最大血圧)が一四〇皿陶エヘリ水銀柱)以上、拡張期の血圧(または最小血圧)が九〇皿取以上のどちらかに当てはまる場合を高血圧としている。また、上の血圧が二二〇~二二九、下の血圧が八五~八九四の範囲であれば、正常高値血圧という。

 

 さて、高血圧、正確には高血圧が持続する原因はなんだろう。

 

 実は、高血圧の大部分は、本態性高血圧症と呼ばれるものだ。高血圧病と呼ばれる人の九〇パーセント以上が、この本態性高血圧症と考えられている。「本態性」といわれても、よくわからない言葉だが、実は、原因がわからない病気に「本態性」と名づけられることが多いのだ。遺伝的な性質や生活の性方が体内の血圧のメカニズムのづプレスをくずして、高血圧をおこしていると考えられている。はっきりとした原因は、よくわかっていないのが現実だ。

 

 一方、本態性高血圧症にくらべれば数は少ないが、二次性高血圧症がある。腎臓や内分泌器官、血管などの明らかな病気が原因でおこる高血圧だ。腎臓動脈が動脈硬化で細くなったために血圧が上がる、アドレナリンの分泌亢進のために血圧が高くなる、などである。若い人で、重症の高血圧を示す場含には、二次性高血圧症の疑いが高い。

 

 では、血液の流れが悪いと血圧は高くなるか? イエスである。イエスどころが、血液の流れが悪いのが本態で、高血圧は見かけの症状だといってもいいのだ。

 

 血圧とは、血管内を流れる血液が血管の壁を押す力のことだ。そして、その反作用で血管の壁が血液を押す。その力は、血管の容積と弾性、血液の流入量と流出量によって決まる。高血圧とは、なんらかの原因で血液が流れにくい状況があって、それを補うために血圧を上げた状態だ。また、血圧を上げるために、小動脈が収縮した状態も、血液が流れにくい状態をつくり、血圧と血液の流れにくい状態とのあいだに、悪循環がつくられることになる。

 

 これまで誰も議論してこなかったことがある。それは次の点だ。

 

 血液が流れにくい状況で、血圧を上げて無理に流すと、血液細胞にかかる力学的ストレスが増す。特に血小板は、かかってくる力学ストレスに対して感受性が強く、すぐに凝集能を高める。つまり、力がかかるとくっつきやすくなる。流れの速いところ、すなわち、動脈で血小板血栓がおきやすい理由だ。トロトロ血液で血流が悪いと、高血圧になり、高血圧になれば血小板の凝集能が高まるという悪循環がつくられる。

 

 高血圧は動脈硬化を促進することが知られている。血液が流れにくいところに圧をかけて血液を無理に流す結果、血管壁に血液細胞がすれて瘍ができる。そこに血小板が凝集してかたまりができる。そのかたまりが血流ではがされて、また血管が傷つく。それが繰り返される。また、血管壁の中の栄養血管の血液の流れも悪くなる。特に動脈の栄養血管は、血管の中の血液の圧力、すなわち血圧がかかって血液が流れにくくなりやすい。そうなると、血管壁の代謝が妨げられる。血圧が高くてドロドロの血液の場含は、動脈硬化のリスクがよ旦高いといえるだろう。

 

 降圧薬は動脈の収縮をおさえて血圧の上昇を防ぐものだ。対症療法だから、一生飲み続けなければならない。しかし、降圧薬を飲むことよりも、血液を流れやすくして血流の低下と血圧の上昇とのあいだの悪循環を絶つことこそ、高血圧の正しい治療法であることを理解してほしい。

菊池佑二著「血液をサラサラにする生活術」より