消化が悪いのは血流の問題

 

 

 「なんとなく胃が重たい」「消化が悪い-下痢が続く」など、胃腸の調子がいまひとつという経験は誰しもしたことがあるだろう。検査をしても原因がわからず、胃薬をもらって服用するうちしまったという例も数多い。いわゆる機能性消但不量症候群といわれるものだ。消化不量、胃がキリキリ痛打など、ときには潰瘍に似た症状を訴えるものの、これ因がつきとめられない。そうした症状を、私たちは胃や腸の疾患だと考える。たしかに、医学の現場では、胃の週動機能に障害があるNUDという新しい名前で呼ばれることもある。しいて日本語に翻訳すると、非潰瘍性上部消化管症状といわれる。しかし、いまだに、精神的なものなのが、機能障害なのか、その原因については議論されているところだ。

 

 私は、血液の流れの悪さが、こうした原因がはっきりしない胃腸障害を引きおこしていることを改めて指摘したい。ストレスを感じると交感神経が刺激されて、アドレナリンが分泌される。交感神経は、自分の意思で動かせない神経だ。そうすると、胃腸の血管が収縮して胃腸にいく血流が減少する。反対に、筋肉の血管が間いて筋肉にいく血流が増える。それによって、筋肉が活発に動けるようになる。緊張すると食欲がなくなることは誰でも知っているはずだ。胃腸の運動、胃液、すい液の分泌、消化された物質の吸収など、どれもたいへんエネルギーを必要とする、すなわち、酸素を消費する仕事だ。胃腸にいく血流が低下すると、胃腸は酸素不量や栄養不量に陥る。血流が著しく低下すると、食べ物をまったく受けつけなくなってしまう。緊張のあまり、あるいは心配ごとが大きくて、吐いた経験をもつ人は多い。

 

 一方、食事のあとは眠たくなる。俗に、私たちはこの現象を「胃に血がいってしまっている」という。たしかに、食べたものを消化・吸収するために、血液が胃腸に集まらなければならない。その分、脳への血のめぐりが悪くなる。脳にいく血流は常に一定に保たれている

。食事をしたくらいで脳血流が減っては困るのだが、その調節能力が、年とともに衰えてい

く。私も最近は、昼食後、三時すぎまで仕事にならないことがある。

 

 胃腸の調子がいまひとつのときに、私たちはおかゆなど、胃に負担をかけない食事をする。私たちは胃腸の調子は、食べ物のこなれやすさなどの物理的な食べ物の性状で左右されると考えているからだ。しかし、胃腸の調子をよくするには、血液循環が大切なのだ。血液が流れやすければ、胃腸にいく血流が十分に確保され、快方に向かうと考えられる。「胃が重くなったら、するめを食べる」という医者がいるが、あながち見当違いでもないだろう。あごをたくさん動かし、唾液がたくさん分泌されることからはじまる一連の反応で、胃腸への循環がよくなることは十分に考えられる。

菊池佑二著「血液をサラサラにする生活術」より